「お刺身ぶり」が通じない

日本メディカルダイエット支援機構の理事長が講演の中に入れ込んでくるギャグは、まず通じないということはなかったのですが、高齢者の中でも認知機能が低下してくると、ギャグをギャグとして感じてくれないことがあります。これが認知機能の検査の一つになるからと、連発してくれと言われることもあります。しかし、連発すると聞いている方は構えてしまい、検査の意味がなくなります。思いもしないところで、いきなり繰り出すので効果があるわけです。
そのギャグの一つに「お刺身ぶり」というのがあります。東京にいるとぶり(鰤)の刺身を口にする機会はあまりありません。それこそ講演先で食べる機会があると、「お久しぶり」の再会で、これを「お刺身ぶり」と言っているわけです。ところが、これを言ったときに、「ぶりは刺身以外でもおいしい」と真顔で言われることもあります。
理事長は東京では「お刺身ぶり」だったぶりを、岡山で活動をするようになってから価格の面からも食べる機会が増えて、「お刺身ぶり」ではなくなってから、いろいろな料理で食べるようになり、他の調理法による味わいを実感するようになっています。しかし、いろいろな方法で食べてみても、やはり刺身がうまいとの話をしています。今の理事長にとっては「お刺身ぶり」ではなくなっていますが、それでも講演では「お刺身ぶり」は頻繁に使っています。
もう一つ理事長がよく口にするのは「身から出たサービス」です。これを言ったときに、「サービスではなくてサビ(錆)ですよ」と注意をしてくれた親切な(?)な方がいました。理事長は講演やセミナーなどで質問に答えるときに詳しく説明しすぎるところがあり、サービスで話したことが自分に苦労をさせることがあり、これを自虐的に「身から出たサービス」と話しています。このギャグの前の話を聞いていればわかるはずなのですが、ギャグだと気づかないのは、よく聞いていなかったのかもしれません。
講演の参加者の皆さんが聞き疲れをしてくるタイミングを見計らって、「ただ聞いているだけでは時間がもったいないので、姿勢を正して腹筋を鍛えながら聞きましょう」と話すこともあります。「特に面白くない話を聞いているときに実践しましょう」というと、参加者も理解をしてくれて、そろって姿勢を正してくれることもあります。ところが、一人だけ頬杖をついて聞く方がいて、これも理解して、わざわざパフォーマンスをしてくれたのかと思って、講演のあとに聞いてみたら、「面白い話なので姿勢を変えずに聞いていただけ」という返事。ギャグに真面目に反応する人はいるもので、これが真面目さから発しているのか、それとも認知機能の低下なのか判断がつきにくいところです。
以前に理事長がコラムの中に「大人気ない」と書いたときのこと、「“大人気”と“ない”は一緒に使わない、人気がないが正しい表現」とメールをくれた方がいました。理事長が書いたのは大人気(おとなげ)で、これを大人気(だいにんき)と読んでしまったようです。そのようなことを言ってくるような方ではないので、このことを家族の方に伝えたのをきっかけに、軽度認知障害が見つかったということを話していました。ギャグとは異なる話ですが、この結果を踏まえて、理事長は新たなギャグの一つに加えています。