「コーンスターチ」と「コーン・スターチ」

コーンスターチはビールの副原料として使われています。原材料の表示を見て、麦芽、ホップに続いてコーンスターチと書かれていれば、麦芽とホップの他にコーンスターチが使われていることがわかります。ビール通の人は麦芽とホップ以外が使われたものを「こんなのはビールじゃない」と言うこともあります。ドイツにはビール純粋令というものがあって、大麦の麦芽、ホップ、水、酵母だけを使って醸造したものがビールと認められますが、日本の場合にはコーンスターチの他に米が副原料に使われたビールもあり、ちゃんとしたビールとされることに違いはありません。
コーンスターチはコーン、つまりトウモロコシを材料にして作ったデンプンのことです。コーン・スターチは、そのまま読むとコーンスターチと同じものと感じるかもしれませんが、これはコーンとスターチを指しています。どういうことかと言うと、コーンはトウモロコシを粉にしたコーングリッツやコーンフレークのことで、スターチはコーンに限らず何かの穀類のデンプンを指しています。ちなみにジャガイモのデンプンは片栗粉です。
コーングリッツはトウモロコシの皮と胚芽部分を除いた胚乳の部分を粉にしたもので、米でいうと白米を粉にした米粉のようなものです。コーンフレークは水で練ったコーンミールを加熱してから圧搾して薄くしたものです。コーン・スターチの表示はコーンスターチと混同する紛らわしい表示だというので、今では「コーン、スターチ」と表示されるようになっています。
日本で流通するトウモロコシの90%ほどが輸入ですが、アメリカのトウモロコシには遺伝子組み換えをされたものが90%以上を占めていることから、ビールにも遺伝子組み換えを心配する人が増えています。納豆や豆腐の場合にはパッケージに「遺伝子組み換え大豆でない」との表示がされています。この表示がないものは遺伝子組み換えの大豆が使われている可能性があるということですが、これは大豆を原材料とする食品の場合で、ビールの副原料のコーンとスターチが遺伝子組み換えであるという意味ではありません。実際のところは、どうなのかというと遺伝子組み換えとは別ルートの流通のものを使用しているとのことです。ただ、途中で絶対に混ざらないという保証をすることは難しく、ヨーロッパに遺伝子組み換えの種が運ばれて、知らないうちに遺伝子組み換えのものが広まっているとの指摘もあります。
価格が高いビールには麦芽とホップだけが材料のものもありますが、通常価格のもの、発泡酒や新ジャンルビール(第3のビール)にはコーンとスターチが使われています。中には大豆たんぱくが使われた発泡酒もあります。コーンスターチではなく液糖が使われているものもあります。この液糖とは何かというと、これは味をビールに近づけるために加えられる甘味料で、コーンスターチを液状にしたものです。また、糖類、ブドウ糖という名前で使われている場合もあります。その材料として、どのようなトウモロコシが使われているのかは、ビールメーカーではなく、液糖などの製造会社に確認しなければわからないことです。