「ブレイクする」は適当な表現か

ブレイク(break)は、壊す、中断する、離れるなど、使われる場面によって意味合いが違う言葉です。ボクシングでブレイクと言われたら選手はクリンチから離れなければなりません。テニスではサーブ権がある選手がセットを勝つことです。ビリヤードでは初めのショットです。音楽では音やリズムが一時的に止まった空白部分を指します。そして、なかなか芽が出なかったことが急に人気が出ることをいいます。最後の意味は「ブレイクする」と表現されることもあります。
このブレイクするの語源はブレイクスルー(breakthrough)です。障壁を突破することを意味する言葉なので、ブレイクするは語源と同じ使い方をされていることになります。チェンジするとかチャレンジする、アレンジする、ストップするという日本特有の和製英語と同じ使われ方をしているものの、ひょっとしたら聞き間違えが、定着したのかもしれないと感じています。
スルーというのは、通過するというのが本来の意味です。LINEでは既読にならないのは「未読スルー」といいますが、無視するという意味として使われています。LINE世代と話をしていたときに、ブレイクスルーのことを切り出したところ、「壊して無視する」という意味だと思ったと話していて、ただ無視をするだけではなくて友達関係を壊すくらいの無視とは凄いとも思ったものです。
こんな話を持ち出したのは、朝食を食べないと体調を崩しやすい、脳の唯一のエネルギー源のブドウ糖が不足して頭が回らないという話をしたときに、雑誌記者から「なんで朝食のことを英語でブレックファースト(breakfast)というのか」という疑問が出されたからです。
fastは通常は速いことを指しています。しかし、食事の場合には絶食や断食を指します。夕食を食べ終えてから朝食までの絶食状態を破壊するのが朝食となります。だから、breakfastで意味が合っているわけです。「朝食は空腹状態を壊すために初めて食べる食事」ということを栄養士の教育の中で話していた先生がいましたが、firstと勘違いしていたのかもしれません。
空腹状態を脱して、1日を始めるためのエネルギー源、活力源をいただく重要なタイミングの朝食であるのに、これを抜いてしまう人が少なくありません。
脳の唯一のエネルギー源のブドウ糖は脳の中に充分に保持されるのは15時間ほどです。夕食を19時に食べ終えて、朝食が7時なら12時間の空腹時間で、まだ3時間の余裕があります。それにも関わらず、朝食を抜いて12時に昼食を食べるとすると15時間となって、2時間ほど不足した時間があります。
これでは脳の働きが低下するだけでなく、脳が全身の働きをコントロールしているので全身の機能低下を起こすことにもなりかねません。空腹状態をブレイクするのは朝食でなければならないということを雑誌記者に話しました。