「塩分を減らすには一品だけ濃くする」は本当か

ナトリウムは高血圧の大きな原因とされていて、ナトリウムが多い塩を摂ると血圧が上昇することが指摘されています。実際には食塩感受性が高い人しかナトリウムが影響しないのですが、日本人は食塩感受性が高い人が多いことから、食塩によって高血圧になると言われているのです。高血圧の予防や治療にはナトリウムを減らすことが第一ということで、対象者には塩分を減らした料理がすすめられます。しかし、塩分が少ない料理はおいしく感じにくいことから、どうしても塩を調味料として多く使うようになります。調味料の基本の「さしすせそ」の2番目のしは塩、4番目のせは醤油、5番目のそは味噌なので、味付けをするほど塩分が多くなってしまいます。
全体的に塩分を控えると味気がない食事になるからと、一品だけ濃い味付けにして、あとは薄くするという方法をすすめている人もいます。この方法によって塩分による満足感を得ながら、他の塩分が我慢するということを身につけさせようということなのでしょうが、この方法だと、いつまでも濃い味、強い塩分を求める気持ちが抑えられなくなります。では、どうすればよいのかというと、思い切って、ほとんど塩分がない食事を1〜2日だけやってみることです。
断食ならぬ“断塩”をしてから、薄味の料理を食べると、それをおいしく感じて、普通の味付けが濃すぎるように感じるようになります。この方法は病院で高血圧患者でナトリウム制限をしなければならない患者に対して行われていることで、1日だけ塩分0g食を食べた翌日に3g食にすると、なんとか食べられるようになります。
塩分を減らしたときには、おいしく感じる工夫も必要で、出汁を多く使う、柑橘類をかける、焼いて焦げ味をつけるということをすると、少なめの塩分でもおいしく食べられます。鰹節のランクを上げて、多めに使って、塩分を減らしたら、患者が塩味に対して「濃くておいしい」と言って喜んでくれたという例もあるのです。