「酒飲みにウコンを飲ますな」の真実

私どもの相談役の先生の書籍を読んだネット通信の担当者から、「酒飲みにウコンを飲ますな、という言い伝えがあると書かれているのですが、ウコンは肝臓によくないのでしょうか」という、なかなかの質問がありました。本来なら著者か出版社に聞くべきなのでしょうが、このコーナーで書くことを了解してもらって、返答をさせてもらいました。
「酒飲みにウコンを飲ますな」というのは、ウコンは酒を飲む人には肝臓によくて、効きすぎるので酒の飲みすぎになるから飲ませてはいけないという意味で使われてきました。この言い伝えは、ウコンがよくないとは言っていないのです。ウコンといっても種類があって、生薬に使われる秋ウコンは中がオレンジ色で、それほど有効成分のクルクミンが多く含まれています。秋ウコンのクルクミン含有量は春ウコンの6倍ほどにもなります。
クルクミンはカレーの黄色の成分となっているのですが、一般のカレーに使われているのは春ウコンです。この秋と春の呼び名は花が咲く季節からきています。一般には春ウコンが肝臓によいとして流通していますが、アルコールやアセトアルデヒドの分解に威力を発揮するのは秋ウコンのほうです。
だから本来なら「酒飲みに秋ウコンを飲ますな」とならなければいけないわけです。この新たな言い伝え候補には真実も含まれています。というのは、健康食品を使って健康被害を起こしているとの報告で一番多いのがウコンだからです。悪酔いをしないからといって酒を多く飲むと、肝臓以外にもアルコールの影響が出ます。飲酒の翌日は胃腸の状態がよくないということも、飲酒量が増えると肝臓で合成される脂肪の量が増えるということも当たり前のように起こります。血中アルコール濃度が高まると脳や心臓への影響が高まることも、飲酒によって一時期は下がった血圧が急に高まることも、免疫を低下させることも飲酒の弊害として知られています。
ウコンを飲んで健康被害を起こす例として一番多いのは肝臓です。肝臓がアルコールの分解を優先しているときには、他の機能が低下するようになります。薬や有害物質を分解するのは肝臓の重要な働きですが、ウコンは漢方の生薬の鬱金として使われるだけでなく、日本薬局方という日本の薬のリストにも掲載されている医薬品成分です。飲酒によって機能が低下した肝臓に薬の成分を送り続けたら、肝臓の機能が低下するのは当たり前のことです。
飲酒をしない人の場合には、クルクミンがアルコールとアセトアルデヒドの分解に使われないために、そのまま肝臓に薬の成分を送り込むことになります。ウコンは肝臓によいというのは、あくまで飲酒をする人の場合のことで、酒を飲まない人は肝臓に負担をかけるだけだということを知っておいてほしいのです。