「魚を食べろ」で食事指導は終わっていいのか

良質なたんぱく質を摂ったほうがよい人、血液サラサラ系といわれる脂肪酸を摂ったほうがよい人に対して、「魚を食べるように」という食事指導がされます。どんな魚を、どんな料理にして食べればよいのかを説明してくれないと、魚なら何でもいいだろうと、好きなものだけを食べるようなことにもなります。魚が嫌いだからと魚の代わりにDHAやEPAといった魚油の脂肪酸のサプリメントを摂っている人もいます。
以前の魚偏の漢字に出てきただけでも、さまざまな種類の魚がありますが、この中には好きな魚もあれば、嫌いな魚もあるはずです。好きでも価格が高くて手が出ないということは別にしても、たまたま食事指導で魚の例として並べられたものが好きでないものばかりだったら、指導のままに食べてくれる人は少なくて、いっそのこと魚を食べるのはやめにして、肉でたんぱく質を摂ろうと考えるようにもなります。魚には旬があり、好きな魚を買おうにも店頭に並んでいない時期もあります。
肉の脂肪酸は飽和脂肪酸でドロドロ系なので、それにサラサラ系の脂肪酸のサプリメントを摂ってバランスを取ろうと考えるのもわからないではありません。嫌いな魚なら食べられなくても、好きでないという程度なら料理法によって食べられるようにする工夫ができます。その調理法も教えて、食事指導はより完璧に近づけることができます。
魚は必須アミノ酸の種類と量のバランスが取れたたんぱく質であることは間違いありません。必須アミノ酸がバランスよく摂れれば、身体を構成するたんぱく質も、酵素や免疫物質なども充分に作られることになります。
魚は健康面でプラス効果があるといっても、マイナス面の心配もないわけではありません。デトックスのために毛髪や爪の重金属(金属ミネラル)を調べる検査がありますが、魚を多く食べる人は体内の水銀の含有量が多くなっています。これは海水中に水銀があるからで、外洋を長く泳ぎ続ける魚ほど多くなっています。天然魚と養殖魚を比べると、圧倒的に養殖魚では水銀は少なくなっています。養殖魚よりも天然魚のほうが安心との考えもありますが、水銀だけでなく大気から海に落ちた汚染物質、例えばダイオキシンなどが魚にまで移動する可能性も指摘されています。
魚に何も問題はなくても、食べ合わせで有害物質が発生することもあります。魚に多く含まれるアミンという物質と野菜に多い亜硝酸が結合するとニトロソアミンという発がん性がある有機化合物が胃の中で発生します。アミンが特に多いのは干物で、亜硝酸が特に多いのは漬物です。干物に漬物という和食の定番の組み合わせが危険だということになります。だから、干物も漬物も食べるな、というのではなくて、食べるタイミングをずらせば問題はないということです。