「100〜120万円」は何と読むのか

テレビ番組のテロップに「100〜120万円」と表示されたときに、これを“100万円から120万円”とアナウンサーが読んでいました。そう読めないこともないのですが、それなら「100万〜120万円」と表示すべきです。「100〜120万円」は“100円から120万円”となるのが本来の読み方のはずです。“100万円から120万円”なら、その差は20%分です。しかし、“100円から120万円”だと1万2000倍もの違いとなって、「随分と開きがあるのだな」と感じさせられることもあります。
科学的な表現なら、間違いなく万や億をつけて表示します。科学的な表現では1万倍ということは普通にあるからです。例えば、腸内細菌が100億個も含まれたサプリメントがあっても、腸内細菌の数に比べたら10万倍も差があることになり。それでは100億個といっても大きな効果がないのではないか、という疑問が湧いてきます。
腸内細菌の数には諸説があって、以前は100兆個といわれていましたが、200兆個、300兆個と増えて、今では1000兆個といわれるようになっています。これは人間の腸内細菌が一気に増えたということではなくて、推定数が増えたということです。これも生きている状態の人間の腸の中を覗いて、一つひとつ数えたわけではないので、実際の数はわからなくても、人間の細胞の数の約60兆個に比べても相当の数であることがわかります。
話が横にズレてしまいましたが、素朴な疑問を、普通だと理解しにくいことを説明するための導入部として使うのは、よくあることです。予算の話をするときに、100円から120万円の幅があることはほとんどないので、「100〜120万円」と表示されても、これは「100万〜120万円」ということは伝わるかもしれませんが、先ほどの腸内細菌の話で「100〜1000兆個」となっていたら、万の単位どころか兆の単位の開きになって、間違って伝えられかねません。
以前に臨床栄養の研究誌の編集に携わっていたときに、「100〜1000兆個」と似たような表現があって、校正のときに慌てて修正したことがありました。そのことを著者に伝えたところ、“どこに問題があるのか”という反応で、まだまだ理解されていないことが多いのだと感じたものです。