おいしさは味覚と嗅覚で発生する

鼻をつまんで食べると味覚が感じにくくなります。風邪をひいて鼻が詰まっていると味が感じないことは多くの人が経験していることです。おいしい味は、味覚だけで感じているわけではなく、これに嗅覚も加わって、本来の味覚として反応しています。嗅覚なしには味覚は成り立たないということです。
味覚は舌の味蕾の味細胞で味の成分をキャッチして、その情報が大脳皮質の島皮質へと伝えられています。嗅覚は鼻と脳の間にある嗅覚細胞が刺激されて、前頭部の嗅覚中枢が反応します。嗅覚細胞は鼻から入ってきた匂い成分に反応するルートだけでなく、口腔と鼻腔をつなぐルートからも刺激を受けます。食べ物をおいしく感じるのは、舌で感じる刺激と鼻から入ってきた刺激に反応するというよりも、口腔から鼻腔に移動してきた匂い成分と舌で感じる刺激が合わさっているからです。
このことは一口で食べたものでも、味と匂いの両方でおいしさを感じていることでもわかります。鼻からの匂いへの反応であった場合には、一口で食べたときには両方の反応は起こらないことになります。そうでないことは、体験的にわかっているかと思います。
なぜ、こんなわかりきったような話を書いているのかというと、有名なテレビ番組のコメントで、鼻をつまんでいると鼻腔から匂い成分が入ってこないので、味が感じられないということを話していて、司会役のMC(master of ceremony)も同感の意思を示していたからです。
鼻からのルートではなく、口腔からのルートで匂い成分が入ってきているのに、なぜ鼻をつまむと匂いを感じなくなるのかというと、これも単純なメカニズムですが、鼻から空気が出ていかないために口腔からの流れが止まって、匂い成分が嗅覚細胞に届かなくなっているからです。揚げ足取りのようなことかもしれないのですが、有名テレビ番組の影響力は大きくて、番組終了後からネットで情報が流れ、テレビ番組を見たのかネット情報に反応してなのか、健康絡みの話題として話している人がいたので、情報提供させてもらいました。