お酒が許される糖尿病患者の条件とは

糖尿病患者は間食の甘いものが禁止されるという話を前回したときに、お酒のほうが禁止は守られやすいという話をしたところ、すぐに雑誌の編集者から質問がありました。禁止されるといっても、中には許可される場合もあるということに反応したのです。糖尿病患者で、飲酒が許可されるのは、まずは血糖値のコントロールがうまくいっていることが大前提の条件となります。大前提が少しでも崩れていたら、絶対に飲酒は許可されません。血糖値のコントロールというと、血糖値が正常範囲まで下がっていれば、それでいいということではありません。何をやって血糖値を抑えているかです。
糖尿病の改善には食事療法が第一で、食事療法によって血糖値が下がっていればよいものの、食事療法だけで下がりきれないときには運動療法が指示されます。食事療法に運動療法をプラスすることによって血糖値が下がっていてもよいわけです。それでも充分に下がらない人には治療薬が使われることになります。薬を飲んで血糖値が下がった場合でも血糖値が安定していればコントロールできていると考える医師がいる一方で、治療薬を使って血糖値が下がっているのはコントロールできていないと考える医師もいます。
飲酒をしてよい人の基準があれば簡単なのに、そんなものはありません。何が基準になっているのかというと、実に曖昧なことで、お酒を飲む医師は薬を飲んで血糖値が下がっていればコントロールできていると言い、お酒を飲まない医師は薬を飲んでいるのはコントロールできていないと言うといった傾向があります。こうなると、お酒を飲みたい患者は判断基準が甘い医師のところに行くのが第一ということになります。
血糖値のコントロールができているとして、次の条件となるのは合併症が出ていないことです。合併症が出ている人は、食事療法と運動療法を頑張って血糖値を低く抑えることに努力をしようとします。それによって血糖値が低めに抑えられていると、糖尿病がよくなった、治ったと思う人がいます。患者が思いたがるというのが正しい表現かもしれません。しかし、血糖値を抑えることで膵臓の負担が減っていても、膵臓が元の状態に戻っているわけではありません。飲酒によって、また血糖値が上昇して、膵臓に負担がかかり、インスリンの分泌が低下するきっかけにもなるのです。
飲酒が許可される状態になったら、次にクリアしなければならないのは飲む量とタイミングです。お酒を飲んで摂るエネルギー量の分の主食を減らさなければなりません。日本酒1合のエネルギー量は190kcalほどになります。ご飯は茶碗1杯が約200kcalなので、1合を飲んだら、ご飯が1回食べられなくなります。ということで半分の量が許可されて、ご飯も半分を減らすように指導されます。この飲み方を、いつでもやっていいわけではなく、糖尿病患者は糖質の摂取が必要なので、1週間に1〜2回の飲酒が許可されます。
ちなみにですが、糖尿病になると細胞がブドウ糖を取り込む能力が低下するので、エネルギー源となるブドウ糖が不足しないようにしないとエネルギー切れを起こしてしまいます。
もちろん、飲んだことにとってストップが効かなくなって、もっと飲んでしまうようなことがない意志の強さが求められる、ということは編集者に話をさせてもらいました。