がんの予防にウォーキングは役立つのか

がんのリスクは身体活動によって減少させられるというデータがあり、健康雑誌やテレビの健康バラエティー番組にもよく使われています。健康づくりのためにウォーキングをしてほしいと願っている私たちにとってはよい傾向ではあるものの、本当に効果があるのかということになると疑問を感じるようなデータも使われています。それはアメリカのデータで、大腸がんのリスクは確実に低下させ、乳がんと子宮がんのリスクはほぼ確実に低下させることが報告されています。これは日本人についても同様の傾向があることが確認されています。
腎がんや膀胱がんについても身体活動が多い人は、がんのリスクが低下することがアメリカで報告されているものの、調査対象者は欧米人で、アジア人では調査されていません。そこで、日本人の生活習慣病予防と健康寿命延伸に役立てるための研究である多目的コホート研究(10保健所管内の約7万6000人の追跡調査)によって、日本人の場合の身体活動と腎がん、膀胱がん、腎盂尿管がんのリスクへの影響が調査されています。
それによると、身体活動量、余暇時間の運動頻度によるリスクへの関連はみられず、大きな差がなかっただけでなく、全体的な傾向もみられないという結果でした。つまり、活動量が増えるとリスクは低下したものの有意差がなかったということではなく、がんの種類によっては活動量が増えて、かえってリスクが上昇した例もありました。
欧米の研究と異なった結果となった理由として、身体活動によって適正体重が維持されることによって、がんの予防効果があることが確かめられていることから、日本人は欧米人に比べて肥満度が低いために、予防効果が低かったことが指摘されています。また、日本人は喫煙率が欧米人よりも高いことから、喫煙による悪影響が身体活動の予防的な作用を打ち消したのではないかと考えられています。健康づくりの運動を始めるには、喫煙対策も同時に行うべきだということを示す一つの研究成果となっています。