“ぎごちない”と“ぎこちない”の違い

「゛」(濁点)があるかないかで、意味が大きく違ってきます。落語の大喜利式にいうなら「はけに毛あり、はげに毛なし」ということになるのでしょうが、濁点があるほうが正しいと思っているのに濁点なしのほうが正しいと思っている人が多いことがあります。しかし、多くの人が使っているほうが、だんだんと正しいと思われていくようになり、ついには逆転するということもあります。その好例としてあげられるのが「ぎごちない」です。もともとは「ぎごちない」が正しい使い方で、「ぎこちない」は間違いと考えられていました。そこで出版社が文字校正をするときにも、「ぎこちない」と書かれていたら「こ」を「ご」に修正していたものです。
正しい言葉づかいの指針とされているのは広辞苑もあるのですが、全国放送されているNHKのアナウンサーの言葉づかいの辞書ともいえる「NHKことばのハンドブック」が使われています。初版(1992年)には「ぎごちない」が第一の読み方で、第二の読み方として「ぎこちない」が乗っていました。ところが、第二版(2005年)では「ぎこちない」が第一の読み方になり、「ぎごちない」が第二の読み方となりました。
「ぎごちない」の語源は、無愛想で荒っぽいことを指す「ぎごつない」で、それからすると「ぎごちない」が本来の使い方です。以前に日本メディカルダイエット支援機構の理事長が書いた原稿が改訂版の書籍に使われたのですが、そのときに「ぎごちない」が「ぎこちない」に直されていて、一般には「ぎこちない」で統一されたのかと感じたものです。
なんだか、こんがらかるような話ですが、この「こんがらかる」も「こんがらがる」と使われることが増えています。もとは糸が絡まることを指していて、物事が複雑に入り組んで筋道がわからなくなることを言います。NHKは放送用語委員会によって言葉づかいを審査していますが、昨年の審査内容では「こんがらかる」を第一推奨形、「こんがらがる」を第二推奨形とすることとしています。しかし、そのうち、一般に使われている「こんがらがる」が第一になる時代も、そう遠くはないと感じているところです。