ご飯の量を減らさないと糖尿病は改善されないのか

健康イベントのQ&Aコーナーで、「糖尿病になるとご飯が食べられなくなるのか」という質問を受けました。その質問に答えるときに思い出したのは機能性表示食品を扱ったテレビコマーシャルで、茶碗に盛られるご飯の量が、どんどん減っていくというシーンが映し出されていたことです。ご飯の量を極端に胃へらすのは厳しいので、健康食品を摂って、ご飯の量を減らさないようにする、という主旨の内容でした。これを見たら、その健康食品を摂っていれば、普通に食べてよいと思わせるシーンです。
これについての意見は後にして、ご飯の量を極端に減らしてよいのか、減らせばよいのかということから触れると、食べすぎのために血糖値が大きく上昇している人は、適度な量に抑えるのは当然のことです。ご飯を減らせばよいという発想は、糖質に含まれているブドウ糖が血糖値を上昇させるからです。血糖は血液中のブドウ糖のことで、ブドウ糖が多く含まれる食品を食べれば、それだけ血糖値が上昇するというのは普通に考えつくことです。
しかし、糖尿病の医療機関の治療食の内容を見ても、主食(ご飯、パン、麺類)で摂取エネルギー量の半分ほどを摂るようにしています。この事実を告げると、「どうして病院で血糖値が上昇するようなことをしているのか」という質問が出るのですが、血糖値を無理に上げさせようとしているわけではありません。
糖尿病は細胞にブドウ糖を取り込むためのインスリンの分泌が低下しているか、インスリンが分泌されていてもインスリンを充分に活用できなくなっている状態です。全身の細胞にはエネルギー源として、すぐにエネルギーに変換されるブドウ糖が必要です。それが少ないために細胞が正常に働かなくなっているのが問題であって、ブドウ糖の取り込みが少ない人に対して、さらにブドウ糖を減らしたら全身の細胞が正常に働かなくなり、それが糖尿病の改善にも悪影響となり、さらに他の疾患にもつながりかねません。
あまりにも、ご飯の量を減らすことは逆効果ということですが、健康食品を摂ることによって、ある程度の量は食べてもよいということを表現するのは、糖尿病の人のエネルギー源不足を防止するにはよいことといえます。このように言うと、「機能性表示食品によって大きく血糖値が下がったら大変では」と言う人もいるのですが、機能性表示食品によって、どれくらいの効果があるのかの結果を見ると、せいぜい10%ほどのもので、心配するほどの結果ではないということです。