ご飯を少ししか食べられないのが糖尿病か

ダイエットの話をするときに、例として糖尿病をあげることがあります。糖尿病というと、血糖値が上昇しすぎることによって血管に影響が出る病気で、血糖は血液中のブドウ糖のことを指すので、ブドウ糖が含まれる糖質の食品を減らせばよいという考えにつながりがちです。糖質制限も、ブドウ糖を摂らなければよいという極端な考えを展開しているところもありますが、糖尿病対策の食事はバランス栄養食です。ブドウ糖を摂らない、ブドウ糖が含まれている糖質を減らすというのではなく、脂質もたんぱく質も摂って、全体的にエネルギー量を減らすことが治療のための基本であり、予防のためにも応用できます。
というのは、糖尿病は膵臓から分泌されるホルモンのインスリンは、ブドウ糖を細胞に取り込んで血糖値を下げるだけでなく、脂肪を脂肪細胞の中に蓄積させる働きがあり、脂肪を多く摂るとインスリンが多く必要になって膵臓に負担がかかります。膵臓に負担がかかりすぎて、インスリンを分泌させる能力が大きく低下したのが糖尿病です。そのために血糖値が下がらなくなり、血液中で増えすぎたブドウ糖が尿とともに捨てられることになり、そのために糖尿病という名となりました。
エネルギー源の糖質、脂質、たんぱく質を摂りすぎると、肝臓で脂肪に合成されます。その助けをするのもインスリンの働きで、糖質も脂質も摂りすぎずに、たんぱく質が含まれる食品だけを食べるようなことをしても、食べすぎればインスリンの必要量が増えて、やはり膵臓に負担がかかるのです。
糖質のエネルギー量は1gが約4kcalで、脂質の約9kcalに比べると少なく、全体のエネルギー摂取を抑えるためには脂質を減らすほうがよいことがわかります。
糖尿病に効果があることをうたっている健康食品の宣伝で、「これ以上ご飯を減らすなんて」という表現をしているところがあり、茶碗に3分の1もご飯が盛られていない(盛るほど入っていないのですが)シーンが出てきます。これは極端としても、糖尿病の食事というと、ご飯の量は少ないと思われています。そして、糖尿病を予防するためには、ご飯を減らせばよいとも考えがちです。
糖尿病の方の食事指導では、三大エネルギー源のバランスを取るようにPFCバランスが使われています。Pはたんぱく質(protein)、Fは脂質(fat)、Cは糖質=炭水化物(carbohydrate)で、たんぱく質が13〜20%、脂質が20〜30%、糖質は50〜65%とされています。糖尿病であっても糖質は50%とすることが求められています。
この事実を知らないと、病院に入院したときに、ご飯の量が多くてビックリした、中には糖尿病を悪化させるつもりかと文句をいう患者がいるというようなことにもなります。
糖尿病は、インスリンが不足するか、インスリンが分泌されていても細胞に取り込む能力が低下することによって細胞がブドウ糖不足になる病気です。細胞レベルでみると、エネルギー源不足になっています。取り込む能力が低下しているのに量を減らしたら、もっとエネルギーが不足して飢餓状態になるので、必要な糖質を摂れるように、ご飯の量を調節しています。ご飯を減らせばよいという単純な考えでは対応できないのですが、それを理解していない患者や家族どころか、なぜか指導する医者にもいるのが問題だということです。