どこでコエンザイムQ10は働いているのか

「コエンザイムQ10は体内で合成されて体内に蓄積されているが、20歳代をピークに合成量、蓄積量ともに減少していく」、「コエンザイムQ10はミトコンドリアでエネルギー産生されるときの補酵素」という話は何度も紹介してきました。そろそろ詳しいことが聞きたいという人が出てくるのではないかと思っていたら、案の定、テレビのディレクターから質問がありました。
「コエンザイムQ10は身体のどこで合成されて、どこで働いているのですか」との質問への答えですが、合成されているのは肝臓で、メバロン酸から合成されています。合成のときにはビタミンB₆が必要となります。どこで働いているのかというと、補酵素ということでミトコンドリアの中にあるエネルギーを作り出すエンジンのような働きをしているTCA回路と勘違いされることもあるようですが、実際にはTCA回路の外側です。
TCA回路について解説している図の中には、回路でクエン酸、アコユニット酸、イソクエン酸、ケトグルタル酸、スクシニルCoA、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸と変化してクエン酸に戻るサイクルで発生したエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を輪の中に書いて矢印で示しているものもあるので、これが勘違いの原因となっているようです。
実際にはイソクエン酸、ケトグルタル酸、コハク酸、リンゴ酸から次に変化するときに電子の移動が起こります。この移動が起こるところは電子伝達系と呼ばれていますが、ここに酸素とミネラルの鉄が加わり、そして補酵素のコエンザイムQ10が作用することによってATPが作り出されます。そのときには水と二酸化炭素も発生します。コエンザイムQ10が働いているのは電子伝達系で、コエンザイムQ10が不足しているとATPが効率よく作られなくなります。
TCA回路を一周するとブドウ糖や脂肪酸から変化したアセチルCoAから34個のATPが作られると一般に解説されていますが、それはコエンザイムQ10が充分にあって電子伝達系でATPがフルに働いている状態での結果であって、コエンザイムQ10の不足はエネルギー不足を起こす原因となります。
機能性表示食品のコエンザイムQ10は疲労回復の機能があるとして表示が許可されていますが、これは効率的にATPが作られて、身体を動かすためのエネルギーが確保されるからです。また、コエンザイムQ10が不足していると活性酸素が多く発生するようになり、細胞の老化が進むことにもなります。活性酸素への対処というと、活性酸素を消去する抗酸化成分を摂ることがメインとなっていますが、元から発生する量を減らすのが一番の対策で、そのためにもコエンザイムQ10は役立っているのです。
コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。