なぜ糖尿病患者は急増しているのか

今から20年前のこと。糖尿病患者と、その予備群を合わせると500万人と推定され、今後も増え続けると警鐘を鳴らしたものです。それが今では糖尿病患者が約1000万人、予備群が1000万人と推定され、合計で2000万人と、4倍にもなっています。わずか20年の間に、です。これは厚生労働省の国民健康・栄養調査の結果で、この調査は成人を対象にしているので約1億人に対する2000万人で、つまり5人に1人が糖尿病か予備群となっているわけです。
以前は高血圧患者のほうが数は多く、高血圧は心疾患(心臓病)、脳血管疾患に直結するということで、高血圧のほうが問題だ、とも言われていました。その高血圧患者の数は、厚生労働省が3年ごとに実施している患者調査(平成26年)では1010万8000万人と推定されています。いつの間にか糖尿病患者と高血圧患者はほぼ同数になってしまったのです。このままだと、すぐに糖尿病患者のほうが上回ることは容易に推測されます。
こういった結果を受けて、糖尿病を取り扱うテレビ番組が増えています。それに合わせるように、私たちへの問い合わせ、企画への協力要請が増えています。
糖尿病は全身病と言われています。見た目的に起こっていることは血糖値の上昇と尿糖の排出量の増加です。しかし、実際に起こっていることは、血液中のブドウ糖が多くなりすぎたために血管の老化が大きく進み、血流が低下していることで、全身に悪影響が出始めるようになっていることです。しかし、糖尿病は合併症が出なければ、糖尿病でなかったのと同じように生活をして、幸せな生涯を送ることができるということは事実です。
合併症が出ないようにするには、これ以上に血糖値を上昇させないように食事療法に取り組むことです。適切なエネルギー量を摂取してエネルギーコントロールができていれば、血糖コントロールができるはずですが、食事療法の捉え方が誤っているために、かえって悪化させることになっています。これが糖尿病を増やしている原因となっているということを伝えさせてもらっています。
どこが違っているのかというと、血糖値を上昇させるブドウ糖が含まれる糖質食品を摂らなければ糖尿病を治せる、という認識です。糖尿病は血糖値で判断されるので、血糖値を上昇させるものを食べなければ上昇しなくなるのは当然のことです。それで治ったわけではなくて、糖尿病の本質は膵臓から分泌されるインスリンが減って、そのためにブドウ糖を充分にエネルギーにすることができなくなることです。
このエネルギーを使って、細胞が生命維持の活動をしているのであり、膵臓が本来の働きをしてインスリンを分泌できるようになるためには、膵臓の細胞にもブドウ糖が充分に取り込まれることが必要です。糖尿病は細胞が取り込むべきブドウ糖が充分に入ってこないために飢餓状態になっていると考えると、大切なブドウ糖を必要以上に大きく減らすようなことをしていたら、糖尿病予備群も糖尿病患者も増えてしまうのは当然の結果だということを指摘させてもらっています。