なぜ糖尿病患者は糖にだけ甘いのか

糖尿病は高血糖状態が続くことで、膵臓から血糖値を下げる作用があるホルモンのインスリンが出続け、そのために膵臓が疲弊して、急にインスリンの分泌量が大きく低下します。これが糖尿病の始まりです。糖尿病を改善するためには、血糖値が大きく上昇しないようにすることと同時に、血糖値が低くなる時間を長くすることが必要になります。血糖値が低い時間帯には、膵臓を休めることができます。休めば、それで回復ができるとは限らず、インスリンが元にように分泌されるようになるのかも保証の限りではありません。
血糖値が低い時間を長くするという話は、あまり目立った方法ではなく、メディアのネタとしても弱すぎるので、ほとんど取り上げられることはありません。少しメディアで話題になったのは血糖スパイクくらいです。1日に3回の食事の後に上昇した血糖値は、空腹時(食事と食事の間)には正常値に下がるのが通常です。ところが、血糖値が下がらずに、高いまま変動することを指しています。インスリンの分泌が低下しているために下がらないという人もいますが、案外と多いのは空腹時の糖分摂取です。
食事は、ゆっくりと吸収されるので血糖値も急激に上がることはありません。ところが、砂糖はブドウ糖と果糖が1分子ずつ結合したもので、すぐにブドウ糖に分解されます。血糖は血液中のブドウ糖のことを指すので、ブドウ糖が吸収されると血糖値は一気に上昇します。血糖値の高さに応じてインスリンは多く分泌されるので、砂糖が使われたものは膵臓に大きな負担をかけるのです。だから、糖尿病になったら間食は禁止されます。しかし、糖尿病患者は甘いものを食べたがります。
もともと甘いものを食べて糖尿病を悪化させた人なら甘いものが好きで、甘いものを食べると血糖値が上昇して脳の満腹中枢が働くようになります。空腹を感じて甘いものを食べた人は、それで空腹が抑えられるようになるのです。空腹は抑えられても、血糖値が上昇しているので、膵臓には負担をかけています。
甘いものを食べたために糖尿病になった人、糖尿病を悪化させた人がいる一方で、お酒を飲んだために糖尿病になった人、糖尿病を悪化させた人もいます。お酒のほうは体にはよくないという意識が持たれることが多いので、糖尿病になったらお酒を飲まないように、どうしても飲みたければ条件がつけられます。その条件をクリアした人だけが許可されるのです。
糖尿病にとっては甘いものも同じであるはずなのに、甘いものだけには考えが甘くなります。“糖だけに甘い”などと冗談を言っている場合ではないのですが、甘いものは週に1回だけ、それも少しの量で、すべての糖尿病患者が許可されるわけではなくて、血糖値の管理が完全にできている患者で、合併症も少しでも出ていないことが条件となります。ここまでの状況であることを伝えなければならないはずなのに、患者ウケを狙ったのか甘いものには甘い考えをして、食事指導をしている専門家がいるのも事実です。