インスリンをコントロールするダイエット法は危険なのか

「インスリンの分泌量をコントロールする方法で、それによって脂肪細胞の中に蓄積される中性脂肪の量を減らす方法は、普通の方には効果があっても、糖尿病の方にとっては危険なことにもなりかねません。」とテレビ番組について、このコーナーで取り上げたところ、具体的な実例を示してくれ、というメールが入りました。発信者はテレビ関係者ではなくて、月刊誌の記者でした。
例として示したのは日本メディカルダイエット支援機構が採用しているタイミングダイエットの手法の一つで、入浴と食事の組み合わせによって体脂肪の量をコントロールしています。入浴の温度が熱め(42℃以上)だと自律神経の交感神経の働きが盛んになります。インスリンの分泌量は自律神経によってコントロールされていて、副交感神経によって分泌量が増え、交感神経によって分泌量が減ります。熱めの温度で入浴すると心身ともに興奮状態になり、インスリンの分泌量が減るわけですが、インスリンには細胞の中にブドウ糖を取り込んでブドウ糖を効率的に使う働きがあると同時に、肝臓での脂肪酸の合成を進めて、肝臓の中で中性脂肪が作られて、脂肪細胞の中に蓄積されるという一連の流れを促進する働きもあります。
インスリンの分泌量を減らすことによって、太りにくくすることができるのですが、血糖値が高めの糖尿病予備群と糖尿病患者には、やってほしくない方法というか、危険になることもあります。国民健康・栄養調査(平成28年)によると、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)は約1000万人、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病患者)は約1000万人と、合計で約2000万人もいると推計されています。日本人の成人人口は約1億人なので、成人の5人に1人は糖尿病予備群か糖尿病患者で、糖尿病はインスリンの分泌量が減ることが原因となっているので、インスリンをコントロールするダイエット法に取り組んではいけないことになります。
このことがわかっていれば、テレビ番組の中で、注意喚起なしにインスリンをコントロールする方法として入浴の温度について触れることはできないと思うのですが、いまだに注意喚起なしに紹介されているというのが言いたかったことです。