ウォーキングで認知症予防

歩くことは認知症予防に効果があると言われています。言われている、というよりも各方面から言われ続けています。大学の研究レベルでは数多くの結果が報告され、実証試験によっても裏付けられてはいるのですが、「だから認知症予防のために地域をあげて歩きましょう」といっても、なかなか多くの方々が参加してくれない、そのために実際の効果があげられないということがありました。しかし、国をあげて歩いて認知症予防を掲げられたら、いくら重い腰でも上げなければならないわけで、いよいよ自治体も本気で取り組まなければならない段階となりました。
このようなことを書いているのは、政府が有識者会議で認知症対策として予防を重要な柱とした新たな大綱の素案を示したからです。その予防の重点項目が歩くことです。日本メディカルダイエット支援機構の理事長が、メタボリックシンドローム対策が叫ばれ始めたときに内臓脂肪症候群の予防・改善のために歩くこと示しても、ロコモティブシンドローム対策が叫ばれ始めたときに運動器症候群の予防のために歩くことを示しても、そしてフレイル対策が叫ばれ始めたときに日常生活の筋肉強化のために歩くことを示しても、なかなか通じなかったのですが、今度こそは認知症予防のために歩くことの重要性がわかって、実践してもらえるのではないかと期待を膨らませているところです。
有識者会議では大綱の素案に、認知症の人数を抑制するために初めて数値目標として「70代の発症を10年間で1歳遅らせる」と明記されました。1歳遅らせるというのは、75歳の人が認知症になるのを76歳にしようということです。随分と控えめな目標のように思われるかもしれませんが、国民全体で考えたら1歳分だけ発症が遅れたら大きな影響が現れます。というのは、大綱の中で示された計画期間の2025年には戦後生まれの団塊の世代全員が75歳以上となり、800万人ほどが一気に認知症のリスクが高まる年齢に突入するからです。
その目標ですが、大綱の計画期間は2025年までに2019年から6年間で6%低下させることを目指しています。2018年の調査では人口に占める割合は70〜74歳で3.6%、75〜79歳で10.4%にのぼっていて、認知症の高齢者の数は2025年には約700万人(高齢者の5人に1人)に達すると予測されています。2015年に約520万人(7人に1人)であったので、いかに急増するかということです。
認知症対策としては、運動と社会参加が孤立を防ぎ、予防につながる可能性があると指摘されています。そのために、地域の公園や公民館でのスポーツ教室や教育講座などの活用推進を掲げていますが、国民的な運動(活動)とするためには取り組みやすく、日常的に続けやすい運動でなければならないわけで、私たちはウォーキング、それも効果が高い速歩と普通歩行を繰り返すインターバルウォーキングをすすめています。