ウォーキングによるデュアルタスク

2つのことを同時に行う“ながら動作”はデュアルタスクと呼ばれます。荷を背負って歩きながら書物を読むという二宮金次郎のようなことで、最近では通勤途中の歩行移動しているときにスマホの画面を見て“勉強”しているということを指すことになるかもしれません。この勉強しながら歩くというのは危険だということで、スマホばかりでなく、二宮金次郎の銅像も腰掛けて読書しているものが登場して、歩きながら読むことを避ける風潮があります。
それに対して、わざわざデュアルタスクという言葉を使って、頭を使いながら歩きましょうというのが認知機能を向上させる方法として広められています。歩きながら脳を働かせると、脳の血流量を増やすことができることが検査によって確認されています。この場合の歩くというのは、道路ではなくてウォーキングマシンのローラーベルトの上を歩くので、歩行による危険度は低くなっています。デュアルタスクで活性化されるのは脳の前頭葉で、運動機能と思考を司る部分なので、同時に刺激することができると説明されています。
認知症の検査では、100から7を次々に引いていくという計算問題が行われます。100→93→86→79→72と減っていくわけですが、これを記憶した人には6を引いていくという計算問題が出されます。この計算を歩きながらやるのがウォーキングによる認知機能向上のデュアルタスクということになります。
ウォーキングは有酸素運動なので効果があるということですが、実際に高齢者対象にやってみたところ、いつもの歩幅を広げて勢いよく歩くということができにくくなり、他に意識が取られていると正しい歩行法がやりにくいことがわかります。慣れてくれば勢いよく歩きながらも計算問題ができるのかもしれませんが、周囲への注意が散漫になったのでは危険でもあり、せっかくの景色を楽しめない、一緒に歩いている人との会話も楽しめないということにもなります。
初めのうちは、頭を使う会話を楽しみながら歩いて、正しい歩き方が身についてきたら、別の頭の使い方を考えるということでよいのではないでしょうか。