ウォーキングは活性酸素を増やさないのか

テレビのバラエティー番組で、寿命を延ばすための方法の一つとしてウォーキングが紹介されていました。ウォーキングを実践して、歩き方を紹介していたのは長寿研究の専門家でしたが、歩き方はよいとしても、ウォーキングをすると、しかも歩幅を広げて早歩きすると活性酸素は増えない、と説明していました。この番組を見ていた雑誌記者から時間を置かずにメールが入りました。「ウォーキングは活性酸素が増えにくいのが正解で、増えないと言ったら間違いではないのか」という内容でした。
私たちはウォーキングでは活性酸素は増えにくい、と説明しています。活性酸素は身体を動かすことによって細胞のミトコンドリアでエネルギーを作り出すときに発生します。その量は吸い込んだ酸素の2〜3%とされています。身体を動かして、酸素を多く取り込み、エネルギー源の糖質(ブドウ糖)や脂質(脂肪酸)を代謝させた結果として発生するので、ウォーキングをすると多く発生しそうな感じがします。安静にしているよりも、日常的な生活をしているときよりも増えることは間違いがないのですが、それほど多くは増えません。
最大酸素摂取量という運動の限界に達した状態を100%とすると、70%ほどの活動量までは活性酸素は大きく増えません。これを超えると一気に活性酸素は増えていきます。というのは、活性酸素を消去する酵素が体内にはあって、この酵素が働くためには酸素が必要だからです。そのために適度に取り込む酸素が増えている段階では、活性酸素は急激には増えないのです。
これは私たちだけの考えだけでなく、多くの研究によって明らかにされていることです。研究者の先生なら知っていて当然と思うことなので、番組のスタッフも見逃していたのかもしれません。もちろん大きく増えるようなことがないので大間違いとは言えないものの、少なくとも増えないという表現は見逃せないことです。