ウォーキングは認知機能を高める

厚生労働省の「介護予防マニュアル」では、ウォーキングは心肺機能の向上や筋肉の強化の項目ではなく、認知機能低下予防・支援マニュアルの中で取り上げられています。また、国立長寿医療研究センターの「認知症予防マニュアル」は運動プログラムが中心になっていて、ウォーキングが重視されています。それくらい認知機能を高めるにはウォーキングが重要となっているのですが、その理由としてあげられているのは血流の促進です。認知症で最も多いのはアルツハイマー型認知症で、次が脳血管性認知症となっているのですが、アルツハイマー型認知症でも脳血管にトラブルがなかったら発症しなかったものも含まれています。
ウォーキングをすると血糖値、中性脂肪値が下がり、血圧も下がることから血管の健康維持を考えるなら、まずは歩く機会を増やすことが大切になります。
ウォーキングがアルツハイマー病に直接的に効果があるなら、もっとよいことになるわけですが、その可能性があることが研究によって明らかにされています。アルツハイマー病は脳にアミロイドβというタンパク質が蓄積することが要因となっています。アミロイドβの蓄積は脳の毛細血管での排出が大きく関係しています。脳細胞に必要な物質は脳血管を通って運ばれています。脳の毛細血管には血管脳関門という部分があって、脳細胞に不要なものを通過させないための関門になっているのと同時に、脳の中で不要となった物質を排出する関門にもなっています。
加齢によって毛細血管の血管内皮細胞の機能が低下すると、血液成分が脳細胞に漏れ出るようになり、アミロイドβの排出が滞るようになって、これが脳細胞内に蓄積することになります。血管内皮細胞の機能を低下させないようにするためには、血流を盛んにして血管内皮細胞から一酸化窒素を放出させることが必要で、一酸化窒素によって血管の弾力性が高まるとともに、血管内皮細胞の機能が維持されることが確認されています。そのために効果があるのは有酸素運動で、ウォーキングの中でも速歩を1日に30分以上することだという研究成果があります。