エネルギー代謝40 体内で脂肪は燃えていない

体脂肪を燃焼させるという言い方は、普通にされていることです。体脂肪は脂肪細胞に蓄積されている中性脂肪のことで、内臓脂肪と皮下脂肪を合わせたものです。体内に蓄積されている体脂肪が減るのは、燃えるといったほうがイメージしやすいとしても、実際にどうなのかというと、燃えるようなことはありません。

脂肪を燃やすには相当の温度が必要になります。脂肪よりも、もっと燃えやすい紙であっても発火点は200℃以上(218〜245℃)となっています。発火点というのは、火をつけて燃える温度を指しています。油の燃焼温度は、燃えやすい灯油が255℃、ガソリンが300℃、菜種油が360℃にもなっています。

体内で、そんなにも高温になることがあるのかというと、人間の体温は42℃が限界となっています。これ以上の温度にならないのは、体温計でもわかります。現在の主流の体温計はデジタル式で、何度が限界なのかはわかりません。以前から使われてきた水銀体温計は目盛りが42℃までしかありません。これ以上になると死んでしまうからです。

人間の細胞は42℃以上になると、たんぱく質が変性して、細胞本来の働きが失われます。

これは卵を温めるとたんぱく質の性質が変わって半熟になり、もとの生卵の状態が保たれなくなるのと同じことです。人間の細胞と卵では違うのではないかと思われるかもしれませんが、卵は単細胞で、1個の細胞でできているだけで、同じ特性があります。

体内で脂肪が燃えていないとしたら、何が起こっているのかということですが、エネルギー源の脂肪酸、ブドウ糖、アミノ酸は細胞の中のミトコンドリアに取り込まれ、その中にあるTCA回路で化学的な変化が起こっています。その変化によって発生したエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)がエネルギーを発生させているのです。

この仕組みについては、次回に取り上げます。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)