カルシウム不足が認知症を進めるのか

認知症の予備群である軽度認知障害の人は、認知症患者と並ぶほどの数となっています。2020年には認知症患者が700万人、軽度認知障害の人は600万人と推定されています。ここでは患者と人と使い分けているのですが、認知症になると治療薬が使われるので、これは患者です。ところが、軽度認知障害と診断されても的確な治療薬はなくて、バランスの取れた栄養、適度な運動、充分な休養という当たり前のことに注意して過ごすように言われるだけです。だから患者ではなくて人と表現しています。それでも治療薬はないのかと粘っていると、「認知症になれば薬が出せるのですけれど」と言われることがあるくらいです。
言われたとおりの健全な生活を過ごしていれば認知症にならないわけではなくて、軽度認知障害の人の半分は5年以内に認知症に進んでいます。認知症になる人と、軽度認知障害のままの人との差は何かということは多くの研究機関で研究が進められていいます。
その一つが東京大学大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻の佐藤謙一郎大学院生と岩田淳講師によって確認されたことで、それはカルシウムの摂取量です。実際にはカルシウムの摂取量を調べたのではなくて、血液中のカルシウム濃度が低い人のほうが軽度認知障害からアルツハイマー型認知症への移行が多いことがわかったという研究成果です。物忘れを主症状とする軽度認知障害の被験者234人の認知機能を最長3年間観察したところ、約半数の被験者が3年のうちにアルツハイマー型認知症に移行・進行していることが確認されています。
こういった成果が発表されると、「カルシウムを多く摂ると認知症にならない」というテーマのテレビのバラエティー番組が登場したりするのですが、血液中のカルシウム濃度が正常範囲ながらも低めである人が認知症になりやすいことであって、カルシウムを積極的に摂った人が本当に認知症のリスクを低くすることができるのかというと、それはまだわからないとしか今は言えないのです。