カルシウム不足で認知症リスクが高まる

カルシウム不足は深刻で、厚生労働省の国民健康・栄養調査では男性は50歳代まで、女性は40歳代までは必要量の70%に達していません。60歳代は少しは改善していますが、それでも男性で80%を下回り、女性で85%を下回っています。すべての年代で必要量(100%)に達していないわけですが、以前に厚生労働省の栄養専門部署の担当から「若い女性にカルシウムを多く摂ってもらうためにカルシウムを摂るとダイエットできるという話を広められないか」という話をされたことがあります。カルシウムが不足すると太るというのはデータがあり、メカニズムも明らかだったのですが、多く摂るとやせるというのは言いにくい状況でした。あまりに多くなると下痢になってやせるということはあるのですが、これはすすめられることではありません。
話は変わって、今の時代はダイエットよりも認知症予防を気にする人が増えたこともあって、栄養成分と認知症の関係の問い合わせが増えています。カルシウムが不足すると認知症のリスクが高まるということでカルシウム摂取を増やせないか、カルシウムは若いときから多めに摂っていないと効果がないという話の切り口がほしいという依頼がありました。
東京大学の研究チームが3年間、537人を対象に行った大規模追跡調査で軽度認知障害からアルツハイマー型認知症に移行している要素を調べたところ、軽度認知障害は234人で、3年間で認知症に移行したのは121人でした。この121人の特徴的な要素が血液中のカルシウム濃度が低かったことです。これは世界的な傾向なのかというと、アメリカの研究ではカルシウム濃度は認知症との関係性がないことが報告されています。日本人だけではなくて東洋人の特徴かもしれないのですが、日本人にはカルシウムが有効であることは確かです。
軽度認知障害は適切な運動、栄養、休養によって30%ほどは正常な状態に戻れることができるとされていることから、その栄養の要素の重要項目としてカルシウムの摂取がすすめられるということです。こんな話をすると、カルシウムの効果的な摂取法について聞かれるのですが、カルシウムは吸収率が30%ほどと低く、加工食品に多いリンを摂ると排泄が増えることから、これを食べればよいと簡単に言うことができないのです。