コグニサイズのウォーキング

認知症予防のための運動法というと、前回紹介したデュアルタスクと並んで、コグニサイズがあげられています。コグニサイズ(cognicise)は、認知症を指すコグニション(cognition)と、運動を示すエクササイズ(exercise)を組み合わせた造語です。この言葉を作ったのは国立長寿医療研究センターで、同センターが開発した運動と認知課題の計算やしりとりを組み合わせた認知症予防を目的として研究開発されました。
コグニションは、ただ頭を使うだけの課題ではなく、脳に認知的な負荷がかかるような認知課題を指していて、これにプラスするエクササイズは有酸素運動であればよいとされています。運動の種類によってコグニステップ、コグニダンス、コグニウォーキング、コグニバイクなどがあります。コグニバイクはオートバイのことではなくて、フィットネスで取り入れられているペダル漕ぎのエアロバイクのことです。私たちが採用しているのは、特別な施設も用具もいらないコグニウォーキングです。
ただ歩けばよいわけではなくて、全身運動となるように歩幅を広げて、腕を大きく振って、勢いよく前進するように歩きます。目標とするのは中強度の負荷で、これはなんとか会話ができるくらいの軽く息が弾む程度の強度を指しています。
コグニウォーキングで出される認知課題は、あまりに簡単ではウォーキングによる脳の前頭葉の刺激に血流をプラスするようにはならないので、難易度が高めの課題が選ばれています。コグニサイズの目的は、運動による脳の血流の高まりを、さらに認知課題によって脳の血流を高めることなので、正解できるかどうかよりも、難しい問題を解こうとして脳を使うことが大切です。このことを説明してからコグニウォーキングを行わないと、問題ができなかったからといって離脱する人を増やすことになります。認知機能を高めるために、わざと回答しにくい問題を出しているということをわかってもらって、いろいろな問題にチャレンジするのが大切です。