サプリメントは補うだけの役割か

サプリメント(supplement)は補助、補完、補充、補足といった意味があり、どれにも補の文字が使われていることからわかるように、不足しているものを補うものを指しています。日本語では栄養補助食品と訳されることが多くなっています。栄養補助ということから、通常の食品では不足する栄養素を補うことができればよいと考えられることが多く、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2015年版)に掲載されている必要量に照らし合わせて不足する分を摂ることができれば、それで充分に役目を果たせるという考え方がされています。
しかし、食事摂取基準の項目は、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維の六大栄養素で、これ以外の機能性成分は含まれていません。
ここでいう機能性成分はポリフェノールやリコピン、クルクミンなどの食物に含まれている成分のことで、これらはフィトケミカル(phytochemical)と呼ばれています。サプリメントを利用する人には栄養補助だけでなく、機能性を求める傾向が強くて、医薬品と同様とは言わないまでも、薬のような効き目を期待している人が多くなっています。このフィトケミカルを第七の栄養素と呼ぶ場合もあります。
フィトケミカルは同じ機能がある素材は多数あるのですが、他に変えようがない機能性成分があり、第八の栄養素と呼ばれています。それはフィトケミカルと似た言葉のヒトケミカルです。ヒトケミカル(hitochemical)は、代謝に必要な成分で、もともとは体内で合成される化学物質です。代謝に関わる成分は数多くあるのですが、その中のR‐αリポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10は三大ヒトケミカルと呼ばれています。
R‐αリポ酸は細胞のエネルギー産生器官のミトコンドリアにブドウ糖を取り込む作用があり、L‐カルニチンはミトコンドリアに脂肪酸を取り込む作用があります。コエンザイムQ10はミトコンドリア内のTCAサイクルでエネルギー物質のATPを合成する酵素の働きを補う補酵素となっています。三大ヒトケミカルは体内で合成されているものの、20歳をピークの合成が低下して、加齢につれて減少していきます。これが加齢による代謝の原因となっています。三大ヒトケミカルは医薬品成分から食品成分として使用することが許可され、サプリメント成分としても使われています。
三大ヒトケミカルを摂ることによって、三大エネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)のエネルギー代謝を高めることができます。補うことによって着実に代謝機能が高まるという意味では、これほどサプリメントの名に相応しいものはないと言うことができます。