ダイエットと栄養失調の認識ギャップ

ダイエット(diet)には、もともとやせるとか食べないという意味はない、という話をしています。元来の意味は「作戦、方針、戦略」といった意味で、国の方針を決定する国会はthe dietです。東京の国会議事堂前駅は、海外の方にわかるようにnational diet buildingと表記されています。国のダイエット推進のためのビルではないのです。ということをセミナーで話したときに、「健康づくりのためにやせたほうがいいというメタボリックシンドローム対策を決めたのだから、ダイエットでよいのではないか」との発言がありました。そういった感覚もありかもしれません。
ダイエットとアメリカ人が言ったら、これは食事療法を指しています。正しい方針に従った健康づくりの基本が食事の見直しで、そこから食事療法となり、さらに運動療法もダイエットとなりました。正しい方針でなければいけないのに、身体に負担がかかってもやせたい、身体を傷めても体重を減らしたいということになると、これは正しいダイエットとは言えなくなります。正しいダイエットで心がけなければならないのは、過剰なエネルギー摂取を抑えて、適正なエネルギー量を確保することです。適正な量を下回ってしまったら、健康維持するための代謝のエネルギーが不足することになります。
一般には極端にエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)が不足することを“栄養失調”と呼んでいますが、大事なエネルギー源を代謝させてエネルギーを作り出すために必要な栄養素が不足することも“栄養失調”です。この違いを明らかにするために後者は“新型栄養失調”と呼ぶようにしています。何が不足するとエネルギー源から充分なエネルギーが作り出せなくなるのかというと、ビタミンB群(ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂)と三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10です。
細胞のミトコンドリアにあるTCA回路の中でエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を発生させるためにはビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂がすべて揃っている必要があります。ミトコンドリアにブドウ糖を取り込むためにはα‐リポ酸が、脂肪酸を取り込むためにはL‐カルニチンが、そしてATPを作り出すためには補酵素としてのコエンザイムQ10が必要になります。これらが不足することは、生命維持と活動のためのエネルギーが充分に作られないという結果につながります。
ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。