ダラダラ歩きでも長く歩けば血糖値は下がるのか

運動によるエネルギー量の計算は「エネルギー量の高さ×時間」が基本となります。ウォーキングというと勢いよく歩いたほうがエネルギーの消費量が高いものの、勢いよく歩くのは疲れるからと弱めの負荷でも長く歩けばよいのでは、という考えをしがちです。糖尿病の人にウォーキングをすすめるときには短い時間でもよいので勢いよく歩くことをすすめています。
運動をしているときに血液中のブドウ糖を主に使っているのは10〜15分ほどで、血糖値は血液中のブドウ糖の量を示しているので、短い時間のウォーキングでも効果があります。ブドウ糖は、すぐにエネルギーとなって大きな力を出すことができるエネルギー源なので、短時間でもよいので勢いよく歩こうと言うときの理屈として使っています。
ダラダラと歩くことで使われるエネルギー量が勢いよく歩くことの半分ほどのエネルギー量だったとした場合、2倍の時間を歩けばよいと単純に考えるかもしれませんが、細胞の中にブドウ糖を取り込む働きがあるGLUT4(グルコーストランスポーター4)は運動をすると細胞膜に近づいてきて、ブドウ糖を取り込んでくれます。その運動も身体の負荷が高まった状態であることが必要で、あまり負荷がかからない状態だと的確に取り込むことができなくなります。だから、同じウォーキングをするのでも、少し息が弾んできて、10分も歩くと汗が出てくる程度のスピードでは歩いてほしいのです。
血糖値が高い人にはウォーキングがすすめられるのは、GLUT4の機能を高めて、細胞にブドウ糖を多く取り込んで、このブドウ糖を細胞内のミトコンドリアでエネルギーとして使うことを目指しているからです。膵臓からインスリンが分泌されているのに血糖値が下がらない人は、GLUT4の働きが低下していることが考えられます。このタイプの人が運動をすることが求められるだけでなく、インスリンの分泌量が大きく低下している人も同様です。というのは、インスリンにはGLUT4の働きを高める作用があり、運動はインスリンと同じような効果があると考えられているからです。