デジタル・IT社会は学習障害者の働き場を作った

優れた学者や作家は“悪筆”が多いと過去には言われました。これは過去に限ったことではなくて、現在でも同じことがあるのかもしれませんが、原稿が自筆からWordなどの電子文章に変わり、発表の機会でもPowerPointが使われ、情報発信の世界でもデジタル文章ばかりになると、それぞれの専門家の自筆を知るのはサインくらいになっています。
日本メディカルダイエット支援機構の理事長は、長年文筆を生業としてきて、自分の名前が表に出ないゴーストライター歴も184冊に及びます。優れた作家ではないものの、一目では読めない文字しか書けない悪筆は子どものときから“評判”でした。文字の形が悪いなら、その中身で勝負するために文筆に励んだと勝手なことを言っているようですが、読めない文字しか書けないというのは、発達障害の学習障害では書字障害に分類されます。それでも文筆で生計が立てられたのはWord processor(ワープロ)が登場したからです。
初登場の日本語ワードプロセッサ(東芝)は630万円だったので、さすが手を出すことはできなかったものの、富士通から100万円を切るOASYSが登場して、出版社が買い与えてくれたことから文章書きを生業にすることができるようになりました。
personal computer(パーソナルコンピュータ)が普及して、文字変換ソフトのWordが広まってからはソフト込みで20万円ほどで購入できるようになり、そして今ではsmartphone(スマートフォン)で文章作成ができるようになりました。
伝達方法は手紙の時代から、電話、facsimile(FAX)、E–Mail、SNSへと発展したことが多くに知られていることですが、ワープロが普及したのにデータ変換ができなくてFAXで送信して、それを受け取った側がワープロソフトで打ち込むとか、電車に乗ってfloppy disk(フロッピーディスク)を持参するという時代から比べたら、どれほど便利になったかを今さら説明する必要もないはずです。
学習障害は、さまざまな状態があり、その改善のためのデジタルツールもさまざま登場しています。その恩恵に預かって、学習障害の改善がはかれている人も少なくありません。今あるツールでは充分に対応できないという場合もありますが、学習障害がある人を社会的に支援していく動きが広まれば、もっとよいツールが開発されて、学習障害でも他の発達障害(自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害)と同様に今後のデジタル・IT社会の重要な働き手となることができるということです。