ヒトケミカルは加工で効能に格段の差

三大ヒトケミカルの一つであるα‐リポ酸はブドウ糖を細胞のミトコンドリアでエネルギーを作り出すときに活躍していますが、胃酸で壊れやすく、食後に摂ると分解されて効果が得られなくなります。この弱点をカバーするために、サプリメント素材として加工するときには天然型のR体に非天然型(人工型)のS体を組み合わせたラセミ体としています。
ラセミ体はR体とS体が等量(50%ずつ)となっています。S体は吸収されても体内ではα‐リポ酸としての働きはしないために、効果があるのは含有量の半分ということになります。
R体とS体を組み合わせることで胃液によって破壊されなくなればよいのですが、ラセミ体になっても胃酸で壊れないわけではないので、やはり体内で使われるR体のα‐リポ酸が減ることになります。
これを解決したのがγ‐シクロデキストリンによる包接です。γ‐シクロデキストリンは8個のブドウ糖が環状につながったもので、その輪の内側にR体のα‐リポ酸を取り込むことができる包接体にすることによって胃酸で壊されずに吸収させることができます。
α‐リポ酸の吸収率は20%以下ですが、包接体にすると吸収率は2.5倍にも高まります。
もう一つの三大ヒトケミカルのコエンザイムQ10は脂溶性のために、空腹時に摂っても吸収されません。脂肪が含まれた食事をすることで胃の中の脂肪によって溶けるわけですが、食後には十二指腸から胆汁酸が分泌され、これによってコエンザイムQ10は吸収されやすい形になります。
一般のコエンザイムQ10は吸収率が低く、たとえ脂溶性物質の吸収性が高い状態の食後に摂取したところで吸収率は1%程度と極めて低くなっています。ところが、酸化型コエンザイムQ10をγ‐シクロデキストリンで包接させると吸収率は18倍も向上するうえに、生体吸収率の低いとされる食前であっても吸収率は大幅に向上することが明らかとなっています。このことから、コエンザイムQ10の包接体は吸収型コエンザイムQ10とも呼ばれています。