フレイルとメタボリックシンドロームの関係

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪が多く蓄積されるために動脈硬化のリスクが高まることを指していて、メタボリックシンドロームの有無が健康寿命に大きく影響すると考えられてきました。厚生労働省の平成28年国民生活基礎調査によると、要介護となった主な原因は、40〜64歳では脳梗塞や心筋梗塞といった血管疾患が5割を占めていますが、年齢を重ねるにつれて減少していき、90歳では1割ほどに減っています。
その代わりに認知症が25〜30%、骨折・転倒が20%ほどとなります。高齢による衰弱は年齢を重ねるにつれて増え、衰弱によって要介護になる人は70歳代から急激に増え始め、90歳代では30〜40%を占めるようになります。メタボリックシンドロームは血管疾患を引き起こしやすいものの、高齢になるほど血管疾患が原因で要介護となる人の割合は減っていきます。
東京都健康長寿医療センターが群馬県草津町で実施した高齢者約1500人の追跡調査(平均7年間)では、フレイルとメタボリックシンドロームの関係性が調べられています。研究開始時点でフレイルであった人は要介護になる割合は非常に高く、男女ともにフレイルでない人はプレフレイルよりも要介護になる確率が低く、フレイルの人はプレフレイルよりも要介護になる確率が高くなっていました。調査開始時点でフレイル状態であった人は自立度が急激に失われ、5年ほどで50%くらいの人が要介護状態または死亡していることがわかります。
メタボリックシンドロームの有無では、メタボリックシンドロームの人もメタボリックシンドローム予備群も、そのどちらでもない人も有意差がなく、メタボリックシンドロームと要介護状態には関連性がないことが確認されています。
高齢者に限ってのデータではあるものの、メタボリックシンドロームか、その予備群であっても、65〜70歳までに動脈硬化に関わる血管疾患(心疾患、脳血管疾患)で重症に到らなかった人は、その後は自立度も健康寿命も、それほど関係がないことが読み取れます。65〜70歳まではメタボリックシンドロームにならないように注意をして、それ以降はフレイルにならないようにすることが健康寿命を延伸することにつながるということがいえます。