フレイルの始まりは低栄養か

75歳以上の後期高齢者が要介護状態になる原因としては、軽度認知障害、サルコペニア(加齢に伴う筋肉量・筋力の減少)、転倒などと並んで、フレイル(虚弱による老年症候群)があげられます。サルコペニアは運動の機会の低下だけでなく、低栄養があげられています。サルコペニアはフレイルの大きな要因となっていることから、低栄養はフレイルの原因ともなっているわけです。
厚生労働省が2016年に提示した「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進(フレイル対策)」の中で、高齢期の疾病予防・介護予防等の推進として、フレイルに対するモデル事業の概要を示しています。その事業内容としては、低栄養、過体重に対する栄養相談や指導、摂食などの口腔機能低下に関する相談や指導、服用する薬が多い場合の服薬相談や指導など、高齢者の課題に応じて専門機関や専門家が相談と指導を実施することとしています。従来の医療機関や体育施設などでは運動機能の指導は充分ではなく、各人に応じた指導内容が求められています。その中でも重視されるのは栄養補給であり、中でも低栄養状態になっている人に対する的確な栄養補給の指導です。
フレイル対策が重視されるのは、フレイルが要介護状態になる危険性が高い状態であると同時に、適切な支援と指導を行うことによって健康状態を維持して、自立した生活を送れる状態であるからです。WHO(世界保健機関)は、病気の定義として自立できない状態を指しています。これに従うと、検査数値に異常がみられる未病の段階であっても、自立できる状態は病気ではなく、健康の範疇であることとなります。
介護保険制度における要介護または要支援の認定を受けた人は我が国では600万人を超え、2030年には900万人を越えると予測されています。現在の30歳代が高齢者となる2050年以降は10人に1人が要介護認定者になると予測されていますが、介護を必要としない高齢者は2020年から頭打ちとなり、2020年以降に増える高齢者のほとんどは要介護者となると考えられているのです。