ボーっと歩いてんじゃねえよ!

NHKが開発したAI(人工知能)ひろしを用いて、健康寿命の問題に挑む番組がNHKスペシャルとして放送されました。65歳以上の高齢者の生活データを学習させて分析を行い、健康寿命を長くするには何をすればよいのかということで、いくつかの大胆提言をしていました。その中に、地域の治安をよくすることで健康寿命が延ばせるという提言がありました。
治安がよい地域は歩いてパトロールしている人が多く、安心して歩くことができると健康寿命を延ばすことにつながるということでした。それの一理あると思って見ていたら、例となる地域として埼玉県を取り上げていました。埼玉県はウォーキングが盛んです。国内最大の日本スリーデーマーチは東松山市で開催され、他にも川口ツーデーマーチ、飯能ツーデーマーチがあり、志木市ではノルディックウォーキングとポールウォーキングの全国イベントが開催されています。また、三郷市ではICウォークとして、ウォーキングの距離、時間などをICカードを用いて記録して、表彰制度などを設けて、健康づくりに役立てています。
全国のウォーキングイベントの発祥の地は埼玉県だとされていて、そもそもウォーキングを健康づくりの重要なポジションとしています。歩いている人を増やすことで、地域の見回りも期待されています。国民健康・栄養調査(平成28年報告書)の平均歩数を見ると1日に男性で8000歩を超えているのは9都府県で、埼玉県は8310歩でした。ウォーキングイベントは男性の参加者のほうが多いのですが、歩くことで身体的な健康度を高めることだけでなく、脳の機能を高めることも期待されていて、黙々と歩くのではなく、頭を使いながら歩くと認知機能を高めるということが言われています。
という話が広まってから、歩きながら計算をする、クイズに答えるということをすすめている専門家もいます。しかし、NHKの雑学クイズ番組でチコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叱られるのが流行っていますが、これをパクって「ボーっと歩いてんじゃねえよ!」ということを言う人もいます。しかし、歩いているときに無理に計算やクイズをすると、周りの景色がよく見えなくなったり、歩きながら会話するという大切な機会が失われることになります。
何も考えることなく、ただ黙々と歩くのは脳への刺激は少ないかもしれませんが、自然を愛でながら、会話を楽しみながらのウォーキングは、身体に多くの酸素を取り込み、その酸素を使って脳を働かせるためにもよいことです。有酸素運動の認知機能改善効果、脳に刺激を与えることによる認知機能改善効果を高めるためには、一定の知識を持っていることが必要で、歩くことによる認知機能の改善について知っているのか知らないのかでは差が生じてくるというのが私たちの考えです。
AIと健康寿命の番組では、健康寿命が高い地域は図書館が多く、本を読んでいる人は健康寿命が長いということを紹介していましたが、これも知識を持って歩くことを大切さを示していると、私たちは考えています。