マヌカハニーのMGOがピロリ菌を退治するのか

マヌカハニーはピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)を除菌する作用があることが知られています。その理由として、マヌカハニーに含まれる抗菌物質のMGO(メチルグリオキサール)をあげる人は多く、マヌカハニーを販売している店舗で質問すると、ほとんど同じような返答が返ってきます。しかし、これは間違いであることが明らかになっています。
マヌカハニーのMGOは2006年にドレスデン工科大学のトーマス・ヘンレ教授によって発見されましたが、教授はピロリ菌が胃酸から自らを守るために分泌しているウレアーゼ酵素の働きがジヒドロキシアセトンによって抑制されることを2017年に発見しています。それまではMGOにはタンパク質と結合する作用があることから、このタンパク質によって細菌の動きが抑えられることが抗菌力の理由とされてきました。ピロリ菌以外の細菌は、このメカニズムで抑制されるのですが、ピロリ菌だけはメカニズムが異なっていて、ジヒドロキシアセトンこそがピロリ菌を退治しているということです。
ジヒドロキシアセトンはマヌカハニーに多く含まれるMGOの前駆物質で、蜜蜂がマヌカの花のハチミツを集めてきたときにはジヒドロキシアセトンが多く含まれているだけで、MGOは少量です。しかし、マヌカのハチミツが37℃の温度で保存されることによってMGOに変換されていきます。マヌカハニーは、マヌカのハチミツというよりも、保存によってマヌカハニーになっていく、というのが正しい表現です。
ウレアーゼは尿素を加水分解によって二酸化炭素とアンモニアに分解する酵素です。強酸性の胃液の塩酸中では細菌は棲息できないのですが、ピロリ菌はウレアーゼを作り出して胃粘液の中の尿素を分解して、アンモニアによって胃酸を中和させて胃の中で生き延びることができます。ジヒドロキシアセトンにはウレアーゼがアンモニアに分解されるのを抑える作用があり、酸性度が保たれることからピロリ菌が生き残れなくなり、除去されるのです。
ピロリ菌はマヌカハニーのMGOによって退治されるということを説明している販売会社があったら、疑ってかかったほうがよいかもしれないということです。