レプチンが増えればやせるのか

NHKの特集番組「人体」で脂肪が取り上げられてから、レプチンに関する質問が増えました。番組の中で詳しく紹介したので、基本的な質問ではなく、どうすれば体内のレプチンを増やすことができるのかということを聞かれることが多くなりました。レプチンは食欲を抑えるホルモンで、脂肪細胞から分泌されます。脂肪細胞の中に蓄積される脂肪(中性脂肪)が多くなると、レプチンが多く分泌されるようになり、食欲にストップがかかって脂肪細胞の中の脂肪を減らすことができるとともに、脂肪燃焼を高めてエネルギーを多く産生することができるという仕組みになっています。この仕組みからいくと、レプチンを増やすには太ればよいということになりますが、太っている人がやせようとして食欲を抑えようと考えることが多いので、太ってしまったら本末転倒です。
レプチンはホルモンであるので、ホルモンの材料のたんぱく質を多く摂ればよい、ということを紹介しているWEBサイトや健康雑誌もありますが、たんぱく質はアミノ酸に分解されて腸から吸収されて、その後は肝臓で体内に必要なたんぱく質に合成されるので、レプチンが作られるとは限りません。他に必要なたんぱく質があれば、後回しとなります。
レプチンを増やす栄養素としてはビタミンEや亜鉛があげられていますが、これも不足している人だとレプチンを増やすところまで行かないのがほとんどです。
レプチンを増やすことができたとしても、そもそも日本人はレプチン抵抗性の人が多く、このことによって日本人は太りやすい体質となっています。レプチン抵抗性というのは、脳の視床下部がレプチンの刺激を受けても充分に反応しない状態で、太ってきても食欲が抑えられない人が日本人は特に多くなっています。
脂肪細胞の数が多く、脂肪細胞の中に蓄積されている脂肪が増えるとレプチンが多く分泌されます。ストレスがたまってくると甘いものが欲しくなりますが、これは糖質のブドウ糖によって精神的に安定するようになるからです。ストレスは食欲を高めるので、レプチンが分泌されても食欲が充分に抑えられないようになります。そのためにレプチンが多く分泌されるようになりすぎて、レプチンに対応するように抵抗性が高まっていくようにもなります。
ストレスはレプチン抵抗性を高めるとしても、ではストレスを解消すれば、すぐにレプチン抵抗性が解消されるのかというと、そう簡単ではありません。レプチン抵抗性がある人は太りやすいことは間違いないので、それを意識して食事を調整すること、運動をする機会を増やすことを心がけるという当たり前のことをすることから始めるしかないようです。