ワクチンは輸送中に劣化しないのか

新型コロナウイルス対策のワクチンの中で、マイナス75℃に保たなければならない扱いに手間がかかる厄介なワクチンが初めに使われます。予約したワクチンが、予約どおりの数だけ日本に送られてくるのかという不安もありますが、本数がそろえば大丈夫というわけにはいきません。マイナス75℃で保存されたワクチンは、冷凍庫から取り出したら5日間に使い切らないと廃棄するしかないということです。効率よく接種するには、人数分のワクチンと合致した接種者をそろえなければなりません。これがスムーズにいかないと、せっかく海外から温度管理して送られてきたワクチンが捨てられるようなことにもなりかねません。
この温度管理というのが問題で、冷凍庫はマイナス75℃以下に設定されていても、製薬会社の製造工場の冷凍庫から輸送用のトラックの冷凍コンテナに運び入れるときに、その間をマイナス75℃に保つ環境でないと温度が上昇してしまいます。冷凍コンテナから飛行機に積み込まれた冷凍庫に移すときにも温度は上昇します。日本に到着した飛行機から国内輸送用の冷凍コンテナに移すときにも、冷凍コンテナから個別配送のための冷凍庫に移すときにも、全国1万か所の医療機関に設置されている冷凍庫に移すときにも温度は上昇します。医療機関の冷凍庫から接種場所に運ぶ冷凍バッグに移すときにも温度は上昇します。
冷凍コンテナと冷凍バッグはマイナス70℃までの保存温度のものもあって、5℃の差があるとしても、冷凍庫から取り出して5日間は有効性が保たれるということなので問題はないと説明されています。しかし、何度も温度の上下の変化があっても、品質の劣化はないのか、そのことはまったく説明されていません。
冷凍食品と比べるのは正しくないかもしれませんが、冷凍食品はマイナス18℃で保存することで品質が保持されます。冷凍食品の工場も輸送車も販売店の冷凍ケースも、そして家庭の冷凍庫もマイナス18℃となっているものの、それぞれ移し替えるときには温度が上昇して、それぞれ再冷凍をされていることから、これが品質も味も劣化させることになります。それと同じことがワクチンで起こったら、有効性が確保できないという心配がされているのです。