下剤で便秘がひどくなる人もいる

便秘で苦しい思いをしている人が救いを求める便秘外来があり、自律神経の調整で便秘が解消すると説明する専門医がいます。その便秘外来によって腸内環境が整えられたというタレントが本も出していますが、まず改善のために何をしたのかというとマグネシウム剤を使って溜まっているものを出したという体験談をテレビ番組の中で語っていました。これを見ていた他局のディレクターから、「出せばよいのか。下剤でかえって悪化する例もあるのではないか」という問い合わせがありました。
下剤など使わずに、食生活や生活習慣の改善で、緩やかに治していけたらいいと考える人は多いかと思いますが、溜まって苦しいのだったら、まずは出してしまおうというのは医学者としては正しい判断だと思います。問題は、そのあとの対処で、便秘になる原因を追求して、その原因に合った方法で対処しないと、また便秘になることがあり、場合によっては悪化することもあるということを知っておいてほしいのです。自己流で下剤や浣腸液を使うと、悪化しやすいというのは、よくあることです。
便通に影響するのは腸内細菌です。善玉菌が多ければ発酵が進んで、便が軟らかくなり、量も増えて出やすくなります。悪玉菌が多くなると腐敗が進んで、便が硬くなり、量も減って出にくくなります。悪玉菌が作り出す毒素(有害物質)が血液中に入ると、さまざまな健康被害を引き起こすことになります。善玉菌は腸内が温かくないと増えにくいのに対して、悪玉菌は腸内が温かくても冷えていても増えます。日本人は血液温度が低いために、腸が温まりにくく、これが悪玉菌を増やすことになります。以前の日本人は食物繊維の摂取量が多く、食物繊維は腸壁を刺激すると同時に善玉菌のエサにもなるので便通がよかったのですが、食物繊維の減少のために善玉菌が増えにくくなっています。
腸内細菌は総数がほぼ決まっているので、善玉菌が減ると、悪玉菌が増えやすくなっています。
下痢をすると腸内細菌が多く排泄されて、そのあとには悪玉菌が増えるので、また下痢をしやすくなります。下剤や浣腸でも同じことが起こります。下剤を使うときには、同時に善玉菌を増やすように乳酸菌やビフィズス菌を摂るか、腸内細菌のエサとなる食物繊維を摂る、さらに代表的な善玉菌のビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖を摂る必要があります。
ビフィズス菌、オリゴ糖については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。