不思議な漢字の読み方の意味

魚偏の漢字については以前に紹介して、それなりの反響がありました。魚偏の漢字は今では魚の種類だけでなく、魚の部位(鰓=えら、鰾=うきぶくろなど)を含めて701種類とされています。魚偏の漢字が登場した飛鳥時代には鮭(さけ)、鮎(あゆ)、鯛(たい)、鰒(あわび)の4つだけで、これは税として都に納めた納税記録の木簡から明らかにされています。
この話をセミナーで前振りでしたところ、セミナー後半の質問コーナーで、「飛ぶ鳥と書いて“あすか”と読む理由は」という超変化球の質問がありました。本来なら答える必要がないのかもしれませんが、前振りから気になって、セミナーの本編に集中できなかったのではないかと、こちらも気になって、知っている範囲で答えさせてもらいました。
あすかというのは、元々の地名の明日香で、万葉集の中に「飛ぶ鳥の明日香」という表記が出てきます。有名な地名には、“青丹よし奈良の都”のように枕詞(まくらことば)がつけられていました。他には「日下(ひのもと)の草香(くさか)」、「春日(はるひ)の滓鹿(かすが)」、「日立(ひたち)の常陸(ひたみち)」などがあります。陸を“みち”と読むのは陸奥(みちのく)から理解できるかと思います。ちょっと変化球では「初瀬川の長谷」というのがあります。奈良の桜井の初瀬川が流れてくる谷に長谷寺があり、長谷を初瀬から“はせ”と読むようになったといいます。
普通は、ここで時間切れにしていますが、よりによって質問をした方が近江さんで、名字(苗字)の由来を聞かれました。近江は琵琶湖の周囲で、琵琶湖は淡水で、京に近い淡水ということで「近淡海」が当てられ、近い入江から「近江」が“おうみ”と呼ばれるようになったといいます。名字は地名から来た例が多いのですが、有名な近江のわりには全国で1万2000人ほど、名字ランキングで1400番台ということです。