予備軍と予備群の認識ギャップ

予備軍という言葉は予備の軍隊、控えの軍隊を意味する言葉で、長らく軍隊以外では使われてこなかったのですが、現状で使われている言葉を積極的に辞書に入れていこうという動きを反映して、今では転じて“ある状態になる可能性がある一団”を指すようになっています。だから、軍隊とは関係のない用語が予備軍となっていても、これは問題ではないわけです。
ところが、厚生労働省が予備群という言葉を使うようになってから、予備軍と予備群の使い分けが言われるようになりました。例としては、糖尿病予備群、メタボリックシンドローム予備群、認知症予備群で、これらは医学の世界で用いられて、今では医学用語として定着しています。ということで、少なくとも医学用語として病気になりやすい一定のグループを指すときには予備軍と書いたら、これは間違いとなるという認識です。
新聞紙面や公式文書では校正ミスとして扱われますが、テレビ画面のテロップに「予備軍」と出ていると、違和感があって仕方がありません。いっそのこと軍隊以外は予備群と使うようにしてくれればよいのですが、辞書に載ったからには、なかなか軌道修正をするのは難しいことです。
あまり意識しないままに予備軍と予備群を混同させて使っているのはバラエティ番組に多く見かけます。テレビ局によって基準や辞書があって、それで統一されているなら、局によって違いはあっても、それぞれの判断ということでよいかもしれません。
ただ、バラエティ番組では他に引っ張られる傾向があり、初めに医学用語として予備群を出すと、それ以降は予備群で統一して使うところがあるので、番組に情報提供するときには初めに予備群が使われるように、医学用語が先に来るようにさせてもらっています。私たちの意図に気づいているのか気づかないのか、初めに予備群が出て、最後まで予備群で統一されていると、少しは問題提起ができたかなと思うようにしています。