交感神経は臓器のアクセルなのか

テレビの健康番組で自律神経をテーマにしていましたが、これを見て疑問を感じた他局のディレクターから問い合わせがありました。「すべての臓器が交感神経で働きが盛んになるのですか」ということを聞いてきましたが、番組の中では臓器の図を出して、交感神経は働きを盛んにするアクセルの働き、副交感神経は働きを抑えるブレーキの働きということを紹介していました。わかりやすい図で、わかりやすい説明ではあったのですが、これが通用しない臓器があります。そのことを聞いてきたので、これに該当するのは胃です。
興奮しているときには、おなかが空かないということを経験したことがある人は多いかと思います。おなかが空かないということは、胃液の分泌が低下していて、消化がよくない状態になっているということです。交感神経が盛んに働くのは原則的には昼間の時間帯です。ところが、胃は夕方以降に働きが盛んになって、消化が進みやすくなっています。これは消化を進めることで、多くのエネルギー源を体内に取り込んで、寝ている間と翌日の前半に使われるエネルギーを溜め込むために起こっていることです。夕方に食べる食事は、胃液が多く分泌されて消化が進み、そのおかげで吸収がよくなるので、夕食に多くの量を食べると太りやすくなります。
食事で摂った糖質に含まれるブドウ糖は、血糖値を上昇させます。血糖値の上昇につれて膵臓からインスリンが分泌されますが、分泌量を増やすのは副交感神経で、分泌量を減らすのは交感神経です。インスリンには肝臓での脂肪酸合成を進め、脂肪酸は中性脂肪に変化しますが、その中性脂肪が脂肪細胞に取り込まれるのを促進するのもインスリンの働きです。これが夕方に副交感神経の働きが盛んになっているときに太りやすくなる仕組みです。
胃には副交感神経はブレーキではなくて、アクセルとなっているということで、これを応用して効果的にダイエットしようという人には夕食の前の入浴をすすめています。熱めの温度で入浴したあとに食事をすると交感神経の働きが盛んになって胃液とインスリンの分泌量が減ります。ぬるめの温度で副交感神経の働きが盛んになったときに食事をすると胃液とインスリンの分泌量が増えて、こちらは太ることができるようになります。やせていて、なかなか太ることができないという人には有効な方法となります。