体温が高まるほど健康になれるのか

日本人は歴史的に動物性のたんぱく質と脂肪を多く摂ってこなかったことから、これらを消化する能力が低くなっています。特に脂肪を乳化して吸収しやすくする胆汁の分泌量が少なく、高齢になると胆汁の不足から肉が若いときのように食べられなくなるという人も多くなっています。
細胞の中で起こる生化学反応は、36.6~37.0℃前後と一定の温度の条件で活発に起こるようになっている。体温が高めの人ほど、血液が温かく内臓などが温まっている人ほど、細胞の代謝が盛んになります。消化液も細胞内で作られるので、やはり細胞が温まるほど消化液の分泌量は多くなるというわけです。
ところが、日本人は血液の温度が低いために、血液中の脂肪が固まりやすく、血流が悪くなりやすくなっています。血液が温まると、血液が送られる先も当然温まってきます。その血液が送られる先として、特に注目されるのが腸です。腸内には1000兆個もの腸内細菌が棲息しているといいます。全身の細胞が約60兆個とされているので、その16倍以上の腸内細菌がいることになります。
腸内細菌も全身の細胞と同じように日々、活動をして代謝成分を作り出しています。その代謝成分のうち人間に役立つものを作り出しているものが善玉菌と呼ばれています。善玉菌は温かな環境で増殖しやすく、活動も盛んになります。そこで、血液温度が高くなれば、血液が送られている腸の温度も高くなり、善玉菌が増えて腸内環境が整えられていくようになるのです。
細胞が温められることによって酵素が活発に働くようになることも認められています。筋肉の中にはリパーゼという脂肪分解酵素が蓄えられています。もともとは中性脂肪を脂肪酸に分解する消化酵素で膵液、胃液、腸液に含まれていますが、筋肉にも運ばれて筋肉細胞で脂肪分解によって脂肪酸を作り、細胞内のミトコンドリアの多くの脂肪酸が運ばれるようにする役目もしています。脂肪酸が多く作られれば、ミトコンドリアで代謝される脂肪酸も増えることから、エネルギー代謝に重要な役割を果たしています。
リパーゼの働きが盛んになるのは筋肉の温度が温まってからで、運動を始めて10〜15分が経過しないと脂肪代謝が盛んにならないのは、筋肉の細胞が温まるまでに一定の時間がかかることと関係しています。リパーゼが盛んに働く温度帯は決まっていることから、筋肉が温まりすぎると汗が出て冷やすようになっています。日本人は体温が低いために、リパーゼの働きが盛んになるまで時間がかかることから、脂肪の分解も遅くなり、これが脂肪をエネルギー代謝する能力を低くさせる一つの要因となっています。