体脂肪が増えると食欲が抑えられる仕組みが働かない人がいる

飢餓状態を生き延びてきた人間には、できるだけ体脂肪を蓄積させる仕組みが備わっています。運動をしないで普通に食べていると、肝臓で脂肪を合成して、これを脂肪細胞の中に蓄積させると同時に、蓄積された脂肪が使われないようにする仕組みがあるから、食事ができない期間があっても生命維持ができるということです。
とはいっても、体脂肪が蓄積されすぎると血液中の中性脂肪を増やすだけでなくて、血圧を上昇させ、血糖値も上昇させる悪玉のホルモンが脂肪細胞から多量に分泌されるので、血管にダメージを与えてしまいます。この他にも悪影響があることから、体脂肪の蓄積量をコントロールするためのホルモンが分泌されます。それはレプチン(leptin)といって、食欲を抑えるとともに、自律神経の交感神経の働きを盛んにして身体活動を活性化させ、消費エネルギー量を増やす働きをしています。ギリシャ語でやせるを意味しているleptosから名付けられたといいます。
太ってくればレプチンが分泌されて、やせるようになり、やせてくるとレプチンの分泌が減って、食欲が高まって太るようになるということです。レプチンが正常に機能していれば過剰に太ることはないはずですが、中にはレプチンが働きにくいために太ってきても食欲が低下しない人がいます。これはレプチン抵抗性と呼ばれています。
レプチンを調整しているのはPTPRJ(脱リン酸化酵素)で、レプチンをキャッチするレプチン受容体の活性化を抑制しています。肥満と呼ばれるほど太るとPTPRJが増えて、レプチンが多くなっても効かなくなるという困った状態を引き起こしています。食欲が自然にコントロールするためには、肥満にならないように食事と運動による改善に取り組むのが、まずは大切ということです。
寝る時間帯に食事をするとレプチン抵抗性になるということを取り上げていたテレビ番組もありましたが、食事の時間を早めるだけでは効果が出にくいのは当然のことです。インスリン抵抗性に最も効果があるのは有酸素運動で、ウォーキングを1回に15分以上、1日に2回、これを1週間に3日以上というペースで続けることによってインスリン抵抗性の改善がみられています。また、有酸素運動とともに無酸素運動を行うことで、より効果が高められます。無酸素運動の中でも筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動を組み合わせるのがよいのですが、普通歩行と速歩を繰り返すインターバルウォーキングなら中強度の速歩をしているときには筋肉の負荷が高まって、無酸素領域の運動にすることができます。