体重を3%減らすとメタボが解消されるのか

NHKのバラエティー番組で、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)をテーマに掲げていました。メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積に加えて、血圧、血糖値、脂質異常(高中性脂肪値、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値)のうち2つが正常値を超えると判定されるものです。メタボリックシンドロームというと、ウエストサイズばかりが注目されて、男性で85cm以上、女性で90cm以上なら内臓脂肪が多く蓄積されて、メタボリックシンドロームに該当すると考えられがちですが、いくら内臓脂肪が多く蓄積されていても検査数値に異常がなければ判定されないということです。
テレビ番組では、内臓脂肪を減らした結果よりも、体重にして3%を減らしだけで、人によって違いはあるものの、血圧、血糖値、高中性脂肪値、高LDLコレステロール値がよい状態となり、無理をして内臓脂肪を減らすことはないということを強く押し出していました。血圧、血糖値、中性脂肪値、LDLコレステロール値に注目すれば、それでもよいということかもしれませんが、メタボリックシンドロームの、もともとの意味合いに注目すると話は違ってきます。
もともとの話は糖尿病腎症です。糖尿病になると腎臓を傷つける合併症の糖尿病腎症から人工透析に進む人が増えます。人工透析は、以前は腎臓病からの進展が多かったのですが、今では糖尿病から人工透析になる人のほうが増えています。人工透析は医療費が非常に高く、これを減らすことは以前から命題でした。内臓脂肪が多く蓄積されると、内臓脂肪が分泌される生理活性物質によってインスリン抵抗性が高まり、血糖値が下がりにくくなることがわかり、そのことから内臓脂肪を減らすことによって人工透析を減らすことを目指して、メタボリックシンドロームへの取り組みが始まりました。
体重を3%減らすことで、血圧、血糖値、中性脂肪値、LDLコレステロール値が低下したことはよい結果ですが、メタボリックシンドロームは血管の老化を低下させることがターゲットであったことを考えると、ただ血圧、血糖値、中性脂肪血値、LDLコレステロール血値が下がったことで、それが動脈硬化の低下に本当に結びついたのかがわからなければ成果として評価することはできません。
全国放送の人気テレビ番組で、体重を3%減らすだけで、健康効果が高まるということを出されて、それを信じて、3%のマイナスだけで安心してしまうようなことがあったら、とても安心していられるような状況ではありません。