体験者は“いつから”実践していたのか

健康食品の体験談を見ていると、“これを摂っていたから”というシーンがあると、ずっと摂っていたのかという疑問が浮かんできます。ダイエットでいうと、これを摂ってやせたのか、もともとやせている人に使ってもらったのか、そこがわからないと判断がつかないところです。長寿者を取り上げたテレビ番組でも、これと同じことを感じたことがあります。長寿の人が毎日の習慣としてスプーン1杯の食品をとっているというテーマで、長寿者を取材してスプーン1杯(ワンスプーン)の食品を、どのように使っているかを紹介していました。
90歳の男性が摂っていたのはアマニ(亜麻仁)油でした。アマニ油は必須脂肪酸のαリノレン酸を含む植物油で、オメガ3脂肪酸に分類されています。αリノレン酸は体内でEPAに変換され、動脈硬化のリスクを下げるということで人気が高まっています。実際には大豆油やコーン油に多いオメガ6脂肪酸とのバランスが重要で、オメガ6とオメガ3の理想の割合は2:1とされています。アマニ油を摂れば良いわけではないとはいっても、テレビ番組は端的に伝えないといけないこともあり、「これさえ摂れば」という内容になるのは、ある意味で仕方がないことです。
αリノレン酸は亜鉛と一緒に摂ると有効性が高まるということで、90歳の男性がよく食べている牛肉には亜鉛が多く含まれているので理にかなっているという紹介をしていましたが、私たちの常識では100gあたりで牛肉(肩)は4.6mgに対して、豚レバーは6.9mg、牡蠣は13.2mgとなっています。この差よりも気になったのは、コーナーの最後のほうで、いつからアマニ油をワンスプーン摂っているのかと聞かれて、「2年前から」という返事でした。これではアマニ油のおかげだとはいえないし、そもそも番組で取り上げることなのか、という疑問が出てきました。
牛は血液温度が高いので、牛肉の脂肪は血液温度が低い人間の血液中では固まりやすく、動脈硬化の要因となるので、そのリスクを下げるためにアマニ油が有効であるというような内容だったらわからないではないという感想です。