健康によい食品も年齢を重ねると害になる

断定をしたがるのがメディアの特徴だけに、今回のテーマにあるように「害になる」と断定するような表現は本来なら慎むべきところでしょう。「害になることもある」と書かなければならないところを、あえて断定をしてみました。この文をきっかけに、メディアの問い合わせがあり、問題提起ができればと考えているからです。
健康によい食品といっても一時のブームで終わってしまうようなものではなくて、きな粉や納豆、朝バナナなどは、基本的な栄養素が摂れる食品で、機能性が確認された成分も含まれているところから、ずっと続けるものという認識です。しかし、高齢になって機能が低下してきたところに摂ると害になるものがあるのは事実です。機能が低下してきているのなら、なおさら健康機能がある食品を摂らなければならないと考えるところでしょうが、機能の低下で特に注意すべきは腎臓の排泄機能です。
腎臓は体内に必要なものと不必要なものを分別して、必要なものは血液中に戻して、不必要なものは排泄します。その機能が正常に働いているので、それほど食品の内容に気を使うことなく食べても、健康は保たれているわけです。ところが、年齢を重ねて腎臓の機能が低下してくるとカリウムの排泄が充分に行われなくなります。カリウムは、ほとんどの食品に含まれていることから、あまりカリウムの機能を考えることもなく、特に多く含まれる食品も意識しないで食べているはずです。
しかし、カリウムが多く含まれる食品を強く意識しなければならないタイミングがあります。それは高カリウム血症が指摘されたときです。腎臓の機能が低下するとカリウムの排泄がうまくいかなくなり、カリウムが血液中に多くなったことによって不整脈が起こることがあります。そこでカリウムが多い食品を減らそうということで、大豆製品やバナナが禁止され、野菜も茹でこぼしによってカリウムを減らすように指導されます。
高齢になってカリウムに注意しなければならない人に、実は健康に気を使っていた人が多くて、それがきな粉や納豆などの大豆製品、バナナ、そして生野菜を多く食べていた人に多いのです。いまだにメディアでは健康によい食品として頻繁に取り上げられ、これらの食品を多く摂るためのレシピが紹介されて人気となっています。健康に特に敏感な高齢者が目にする機会が多くて、これを見て健康のためといって多く食べるようにするのは全般的にはよいことです。しかし、年齢や条件によっては危険を伴うことも告げておかないと、健康のための情報であったはずが、健康被害を引き起こすきっかけにもなりかねません。
健康食品のテレビコマーシャルが、小さな文字で注意書きを示しているのを目にしますが、少なくとも、これと同じように表示してほしい、できることなら大きく表示する、さらに司会者が一言だけ注意喚起をしてほしいと考えます。しかし、そんなことをしているのは、NHKくらいで、民放では目にしたことがありません。私たちが、注意に注意を重ねて凝視していても、見逃しているだけかもしれませんが。