健康に一番よい食べ物を教えてほしいという質問

健康と食事の関係について研究をしていると、「健康のために何を食べていますか」とよく聞かれます。セミナーで腸の健康の話をしたときに、その後のQ&Aで何を食べているのかという質問をされると、当然のように腸内細菌の善玉菌を増やす方法について話をするわけですが、それが終わってから「腸のためだけでなくて長生きするためには何を食べているのかを教えてほしい」と言われることがあります。要は、「これだけ食べていれば大丈夫」というものを教えてほしいということなのでしょうが、そんなものがあれば誰にもすすめています。
これは私どもの相談役の先生の講演会に同行したときに先生が受けた質問ですが、ある健康食品の素材をあげて、「これは長生きのために役立ちますか」と聞かれ、先生は親切に身体に効果があるメカニズムについて説明をしていました。その数日後のこと、ある販売グループのホームページに「○○先生が私たちの□□を推奨しました」と載っていて驚いたことがあります。先生は商品の推奨もしていなければ、素材の話をしただけで商品のことを誉めたわけでもありません。こんなこともあるので、先生方の中には、質問を受けたときに素材の話もしなくなった方もいます。
健康で長生きするためには何がよいかと聞かれても、それぞれに人によって強いところ、弱いところには違いがあって、効果のある成分を摂ったとしても、それがちゃんと届いて、しっかりと効いてくれるのかはわかりません。ところが、テレビ番組や雑誌記事などを見ていると、この成分は、こういったメカニズムで作用するということを紹介して、“必ず効果がある”と思わせるような表現がされていることがあります。このようなものを何度も見ているうちに、その成分は、まるで薬のように効果があると思い込むようなことにもなりかねません。
それを狙っているのではないか、と思えるような番組やCMもあります。「なかなか素晴らしい健康情報ではないかと見ていたら、青汁の宣伝だった」という話をしていた方もいました。その方から、「どこの青汁が一番よいですか」という質問をされたことがあります。野菜不足の食生活でも青汁を飲んでいれば補えるというような内容の番組やCMですが、どうせ飲むなら一番効果があるものをと願う気持ちはわかります。パッケージに書かれている成分表を見て、成分量が多いものを選びたいという人もいますが、根本的なこととしては青汁を飲んでよい結果が得られる人なのか、そうでない人なのかを判断して摂るべきということを話しています。
生野菜を食べると身体が冷える人がいます。特に夏野菜は冷やす作用が強くなっています。青汁に使われるケールは冬が旬ですが、キャベツの一種なので夏野菜ではないといっても冷えやすいものです。また、大麦若葉も冬が旬ですが、やはり冷えやすくなっています。身体が冷えやすい人には栄養豊富であっても健康にはマイナスになることもあります。こういった情報も知って、健康によいのかどうかの判断をしてほしいものです。