健康寿命を3年延ばす厚生労働省の目標の効果

日本人の平均寿命は世界2位で、現在も平均寿命は延び続けています。以前のように世界1位に返り咲けるのかというと、それは難しいとされています。その理由は健康寿命の延びが小さくて、平均寿命との差が縮まらないからです。平均寿命が延びた分だけ健康寿命が同じように延びると、高齢になってからの医療費が増えることを見ても、病気の重度化が進み、これが寿命の延びを止めることになるからです。わかりにくいことかもしれませんが、現在の生涯医療費は2700万円に達していて、その半分は70歳以降に使われています。高齢になればなるほど医療費がかさむようになり、病気が寿命に影響を与えるようになるので、これが平均寿命の延びを鈍化させているというのです。
日常生活を制限されることなく過ごせる期間の健康寿命は3年ごとに厚生労働省より発表されていて、現在の発表データは2016年のものです。次に発表されるのは2019年のデータなので、統計処理をした翌年に発表される予定となっています。2016年の健康寿命は男性が72.14歳、女性が74.79歳で、当時の平均寿命(男性80.98歳、女性87.14歳)と比べると、男性は8.84年、女性は12.35年の差があります。この期間には医療費、介護費ともに多くかかることから、いかに健康寿命を延ばすかが健康対策の重要項目となっています。
厚生労働省は2040年までに2016年に比べて男女ともに健康寿命を3年以上延ばすことを目標に掲げています。その目標は男性が75.14歳以上、女性が77.79歳以上とされています。「日本人の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)によると、2040年の平均寿命の推計値は男性が82.82歳、女性が89.55歳となっています。これをもとに計算すると、健康寿命との差は男性が7.68年、女性が11.76年となります。この数字だけを見ると、現状との差は男性が1.16年、女性が0.59年となり、あまり大きな短縮ではないように感じます。
しかし、この分だけ健康状態が続き、医療費、介護費が使われる時期が短くなるのは、高齢者全体の数から考えると、非常に大きな金額となることがわかります。なにしろ生涯医療費は3000万円にも増えて、2040年には70歳から平均寿命までは男性が12.82年、女性が19.55年にもなるので、2年以上の高額医療費、高額介護費のプラスは大きな国家的な損失とみられているのですからです。