健康寿命延伸のための提言22 提言のエビデンス2飲酒4

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第4回)を紹介します。
適正な飲酒量の目安が示されています。いろいろな疾病をまとめて予防しようと考えると、お酒を飲む場合は、1日あたりアルコール量に換算して23g程度(日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の3分の2、ウイスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならグラス2杯まで)にとどめておくことがよいとされています。厚生労働省の「健康日本21」でも、節度ある飲酒として1合程度までを推奨しています。
また、週1日以上飲酒する習慣のある男性の研究から、お酒を飲まない日、つまり休肝日の群(グループ)に比べて、週1〜2日の休肝日がある群では、飲酒量が週平均150g未満(1日あたり概ね1合未満)の群で死亡全体のリスクが低下して、飲酒量に関わらずがんや脳血管疾患による死亡リスクが低下することが報告されています。そのことから、お酒を飲む場合には、休肝日を設けることが推奨されます。
お酒に対する強さは、アルデヒド分解酵素のALDH2の遺伝子塩基配列によって異なることがわかっていて、お酒を飲んでも顔色が変わらずたくさん飲める人、顔が赤くなる人、まったく飲めない人に分かれています。この違いは、お酒によるがんのなりやすさにも影響していて、食道がんの場合は同じように多くの量のお酒を飲んだときには、お酒に強いALDH2の塩基配列を持つ人は、まったく飲まない人に比べて約8倍、お酒に弱いALDH2の塩基配列を持つ人は約50倍も食道がんになりやすいことが報告されています。
日本人を対象としたコホート研究から、お酒に弱い体質の男性は、少量の飲酒量でも飲酒量が増加するほど飲酒と関連しているがん(口腔がん、咽喉頭がん、食道がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、乳がん)の罹患リスクが増加していました。一方、多量の飲酒をする男性は、お酒に弱い体質かどうかに関わらず、飲酒関連がんの罹患リスクが増加することが報告されています。