健康寿命延伸のための提言1 提言の意義

健康づくりの基本的な提言については、これまでも医療系の学会や国の研究機関などから発表されていて、これを基本として各方面の健康のために何をすればよいのかの手法が考えられてきました。日本の医療の最前線の研究機関は“研究センター”という名称で、それぞれ専門分野の研究が実施されています。その国立高度専門医療研究センター6機関が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」が公開されました。
その研究センターは、「国立研究開発法人国立」と「研究センター」という名称が共通していて、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センターです。今回の提言は、日本人の健康寿命の延伸のために必要な予防行動について、個人と、それを取り巻く社会的要因に関する目標を掲げたものです。
健康寿命は、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことで、いわゆる寿命とは区別されています。寿命は何歳まで生きたかという結果であり、健康寿命は健康状態で過ごしている期間です。寿命から健康寿命を差し引いた年数が、寝たきり状態ではないとしても、ほとんど家の中や家の近くを出歩く程度の行動しかできない状態です。これでは健康を保つことはできないことから、できるだけ早く健康寿命を延伸する行動を起こすことが求められます。
提言でも、健康寿命を延伸させるために小児、妊婦、成人、高齢者など年齢の状態に応じて、さまざまな疾患を横断的に予防することが必要としています。これまで予防について疾患横断的にまとめられたガイドラインが存在していないことから、画期的な提言内容であり、健康を左右する生理学的要因や生活習慣、社会的・物理的環境の10項目として喫煙、飲酒、食事、体格、身体活動、心理社会的要因、感染症、健診・検診の受診と口腔ケア、成育歴・育児歴、健康の社会的決定要因について公衆衛生目標が提示されています。