健康情報を断定できる人が羨ましい

羨(うらや)ましいという言葉は、あまり使いたくはないのですが、何でも断定的に言い切れる人は、ある意味で羨ましくて仕方がありません。日本人の体質と食事の関係を分析した書籍をよく知っている方が出していたので、気になるページだけを立ち読みしました。いくつも突っ込みを入れたいところがあったのですが、中でも驚いたのは「日本人に肉食は合わない」というところです。
このことは私たちも主張していることで、脂肪酸の種類や血液の温度、消化酵素、腸内細菌など複数の理由をあげているのですが、その先生は「豚や牛のエサに使われる抗菌剤が原因」と断言しています。抗菌剤が少なからず影響することは私たちも認めるところですが、それがすべてだという書き方は、私たちにはできないことです。
以前に、身体の不調の原因は、すべて有害ミネラルのせいで、デトックスで改善できると言い切って人気となったドクターがいます。活性酸素の存在が知られたとき、やはりすべての不調の原因は活性酸素だと言い切って、抗酸化物質さえ摂れば健康になれると断言した研究者がいましたが、身体はそんなに単純な仕組みにはなっていません。NHKの特集の「人体」では、身体の各部分は連携していて、調整し合って健康が保たれているというのがメインテーマとなっています。
それがすべてとは思わないものの、単純に一つのことだけが健康被害を与えることで、その一つを解決すれば健康が保たれると、“死ぬまでに一度でいいから”言ってみたいものです。おそらく、そんな時は来ないとは思うのですが。
ダイエットでは、すべてを血糖値のせいにして、血糖値が上昇しなければ太らないと言い切っているドクターがいて、その主張を取りまとめた食事術の書籍がベストセラーになっています。糖質だけを食べると血糖値が急上昇するので、脂肪と一緒に糖質を摂ると血糖値の上昇度合いが低くなり、太らないという主張です。
血糖値が上昇するとインスリンが分泌されて、インスリンには肝臓での脂肪合成を進める作用があるので太らないというのは間違っていません。しかし、インスリンは血液中の脂肪を脂肪細胞の中に蓄積させる働きもあります。血糖値が上昇したときに脂肪があると、どんどんと脂肪細胞に蓄積されます。ということは、糖質と脂肪を一緒に摂ると太るということになるのですが、そのドクターの主張は違っています。
同じエネルギー量の和菓子と洋菓子を食べた場合、糖質がほとんどの和菓子よりも、糖質と脂質(脂肪)が含まれた洋菓子のほうが圧倒的に脂肪の蓄積量が多くなります。これは普通にダイエット指導をしているだけでも気づくことです。ましてや患者と付き合っているドクターならわかりそうなはずですが、その書籍には多くの患者の検査をしてわかったことだと記載されています。
断定するときには、その根拠をデータをもって示してほしいところですが、多くの書籍は文字で読ませることが中心となっているので、根拠のデータが示されていないことが多いのです。